【医師の年収ランキング】医師の診療科・働き方別に時給換算で計算してみた

本記事では、医学生でありクリニック集患支援を行なっている筆者が、医師の診療科別の時給を計算してみた記事です。

最近X(Twitter)で広く拡散されたこの「医師年収ランキング2026」を、出発点にしたいと思います。

「美容外科 約2,820万円」「形成外科 約2,280万円」と44診療科すべてに金額が並び、末尾には「AIファクトチェック」と称する裏付けまで添えられています。もっともらしい数字ではあるのですが、出典を一つずつ追うと根拠が確認できないものが多くありました。

筆者は現在、医学部に通いながらクリニック経営に関わる仕事をしています。同級生や先輩と「将来どの科に進むか」という話をするとき、彼らがこの種のランキングを参照していることに何度も驚かされました。出典が確認できないままの数字が、医師個人のキャリア選択を実際に左右している状況は、見過ごせない状況だと思っています。

この記事では、できるだけ信頼度の高い一次資料だけを使って、診療科別・働き方別の「時給」を再計算してみます。
開業/勤務など、医師の働き方が多様にある中で、「年収」で語られる以外の方法があっても良いと考えたためです。
参照するデータはできるだけ厳選し、どのくらい信頼できるデータであるかについても説明しながら書いていきます。

多くの医学生や医師の先生方のお役に立てば幸いです。

執筆者プロフィール

太田 旭

株式会社eggside 代表取締役。医学生。自由診療のための医師向けメディア「doctorside」を運営しつつ、LP制作、Google広告運用、SNS運用代行など、クリニック・歯科医院を中心としたマーケティング支援に従事しています。

ネット上の年収ランキングの出典を追ってみた

冒頭に埋め込んだツイートのランキングについている「AIファクトチェック」セクションには、複数の引用元が列挙されています。これらを一つずつ確認していきました。

「令和7年賃金構造基本統計調査(2026年3月公表)で医師の月額所定内給与が前年比約11%増加」——令和7年の賃金構造基本統計調査の概況は2026年3月24日に公表されていますが、この統計は医師を一括で集計しており、診療科別の年収データは公表していません。「11%増加」の記述も実際の概況には見当たりません。

「第25回医療経済実態調査(2025年度実施分)」——実在します。2025年11月26日に公表されました。しかしこれは医療機関の経営実態調査であり、病院の約7割、診療所の約4割が赤字という「経営悪化」を伝える内容で、医師の診療科別年収を示すものではありません。「年収11%増」は本調査の趣旨と逆方向の話です。

「民間医局 2026年度 医師の年収実態・診療科別レポート」「ドクター10 2026年版 医師アンケート調査(N=2,055)」「リクルートドクターズキャリア 2026年4月時点 診療科別求人募集インデックス」——いずれも該当するレポート・調査が確認できません。医師転職研究所(ドクター10)の最新公開アンケートはN=2,055ではあるものの2025年8月実施版で、ランキング記事の数字とは一致しません。

ネット上に流通する医師年収ランキングには、次の3つの構造的問題が共通して見られます。

問題1 出典の捏造または誤引用
実在する統計名を引用しながら、その統計が公表していないデータを「引用」と称して提示するパターン。AI生成記事に多い特徴です。

問題2 副業外勤を「推計」で水増し
「公的統計の基本給に副業収入や特殊勤務手当を加味した推計中央値」と注記がついていても、推計式は開示されていません。

問題3 求人提示額と平均値の混同
転職サイトの最大値や、特定地方の高単価求人を「平均」として扱う傾向があります。

筆者の周囲でも、初期研修先や進路を考えるときにこの種のランキングを「なんとなく」参照する学生は多くいます。しかし上記のような構造的問題が広く認識されているとは思えません。それであれば、医学生・医師向けの媒体として、出典の検証から始める記事が一本くらいあってもいいだろう、というのが本記事の出発点になっています。

データ評価カバー範囲主な弱点
第25回医療経済実態調査(2025)A個人立クリニックの診療科別損益(R6年度)生存バイアス、損益≠院長手取り
医師勤務実態調査 R1(2019)A−診療科別週労働時間 N=8,9376年前のデータ
医師・歯科医師・薬剤師統計 R4(2022)A全数調査・診療科別医師数と年齢分布年収データなし
賃金構造基本統計調査 R6(2024)B+医師全体の年齢階級別給与診療科別なし、副業含まず
医師転職研究所アンケート(2025年8月、N=2,055)B−診療科別年収中央値・年代分布自己申告、転職検討者バイアス
ドクタービジョン求人データ(2025年9月)C+美容外科を含む20科の求人提示額求人提示額≠実支給
東京保険医協会「開業医の働き方調査」(2020)C開業医の総労働時間東京限定、診療科別なし、N非公表
厚労省・野村総研「美容医療従事医師実態調査」(2025)公表待ち美容医療従事医師の悉皆調査結果未公表(2025年3月回答締切)

ネットの記事を読むときは、この8つに依らないものは原則として根拠が薄いと考えていいと思います。逆に、この8つを組み合わせれば、ある程度信頼できる推計はできます。以下、その作業に入っていきます。

年収を労働時間で割ってみる——勤務医編

計算方法を最初に開示します。

  • 分子: 医師転職研究所アンケート(2025年8月、N=2,055)の診療科別年収中央値(副業込み)。美容外科のみドクタービジョン求人データ(2025年9月)の平均年収を採用
  • 分母: 厚労省「医師の勤務実態について」(令和元年=2019年9月、N=8,937)の診療科別週労働時間(診療+診療外+宿日直待機の合算、診療科性年齢調整済) × 48週。美容外科のみ求人記述ベースの推定値(週42時間)
診療科年収中央値週労働時間推定時給年齢中央値
美容外科2,674万円約42時間約13,300円42歳
精神科1,700万円47時間50分約7,400円42歳
麻酔科1,900万円54時間06分約7,300円44.5歳
整形外科1,900万円58時間50分約6,700円47歳
救命救急1,900万円60時間57分約6,500円37歳
脳神経外科1,900万円61時間52分約6,400円47歳
リハビリ科1,500万円50時間24分約6,200円47歳
形成外科1,600万円54時間29分約6,100円42歳
産婦人科1,700万円58時間47分約6,000円42歳
病理診断科1,500万円52時間49分約5,900円47歳
皮膚科1,500万円53時間51分約5,800円42歳
小児科1,500万円54時間15分約5,800円47歳
眼科1,300万円50時間28分約5,400円42歳
全科平均1,700万円56時間22分約6,300円47歳

この計算結果から言えること


美容外科の時給は他科の倍以上になっています。年収が高いだけでなく労働時間も短いため、額面と時給の両方で他科より高い水準が出ています。これが一次データから見える率直な結論で、若手医師が美容外科に流れている経済的な理由はここに集約されると考えられます。


保険診療系の中で見ると、年収ランキングで上位に来る脳神経外科・救命救急・産婦人科は、いずれも年収1,900万円前後ですが、時給では中位以下になります。


精神科は「年収中央値が全科平均と同じレベル」ですが、労働時間が全科で最短クラスのため、保険診療系では時給が最も高い水準になります。眼科も同様で、年収では下位ですが時給では中位を維持しています。


整形外科と麻酔科の「年収1,900万円」が同額でも、時給に換算すると麻酔科の時給は整形外科より約9%高くなります。

この計算結果を批判的に考察してみる

(1) 年収データは2025年、勤務医の労働時間データは2019年で6年のギャップがあります。2024年4月から始まった医師の働き方改革(時間外労働の上限規制)で、勤務医の労働時間は短縮方向に動いている可能性が高いと考えられます。つまり現在の実時給は、表よりやや高めに出る方向でずれていると見ておくのが妥当かもしれません。

(2) 令和4年(2022)版の医師の勤務実態調査も存在しますが、診療科別週労働時間の平均値は公表されていません(中央値超分布のみ)。このため最新の労働時間データには到達できませんでした。

(3) 美容外科の数字は、他科と比べて土台が異なります。年収側はドクタービジョン求人データの「求人提示額」ベースで、実際の支給額(特にインセンティブ部分)は変動します。労働時間側は求人記述から推定したもので、N付きの調査データではありません。美容外科の時給13,300円は、他科の時給と完全に同じ精度では並んでいない点に注意してください。

(4) 内科サブ専門(循環器・消化器・呼吸器・血液など)の労働時間は、厚労省データでは「内科」として一括集計されているため、サブ専門別の時給は計算できません。

(5) 医師転職研究所のアンケートは転職検討者中心のサンプルで、勤務医全体の代表性は弱いとされています。年収の絶対値より、診療科間の相対比較として読むのが安全です。

同じ年齢で揃えると、ランキングはどう変わるか

医師の年収は年齢とともに上昇します。診療科ごとに医師の年齢構成が異なるため、年収ランキングの上下には「その科に若手が多いか、ベテランが多いか」という別の要因が混入しています。
各診療科の年齢構成の特徴は以下の通りでした。

(医師転職研究所2025、医師・歯科医師・薬剤師統計R4より)

  • 若い科: 美容外科 42歳、精神科 42歳、産婦人科 42歳、皮膚科 42歳、形成外科 42歳、救命救急 37歳
  • 平均年齢の科: 整形外科 47歳、脳神経外科 47歳、病理診断 47歳、小児科 47歳、リハビリ科 47歳
  • ベテランの科: 循環器内科・消化器内科などの内科サブ専門は50代が中心
  • 医師全体の平均年齢: 50.3歳(医師・歯科医師・薬剤師統計R4)

つまり美容外科やドクタービジョン求人データで「平均年収2,674万円」と示されているとき、その平均年齢は42歳であり、医師全体平均より8歳若いわけです。年齢補正をかけずに「美容外科は他科の1.6倍」と語るのはミスリードに近いと言えます。

40代前半に焦点を絞った場合で考えてみる

賃金構造基本統計調査R6によれば、医師全体の40代前半の年収はおおむね1,750万円前後とされています。同年齢の美容外科医の平均年収はドクタービジョンデータで約2,300〜2,700万円と推計できます。「同じ40代前半同士で比較した場合」、美容外科はそのほかの診療科と比較しては1.3〜1.5倍程度で、ランキング表が示す「1.6〜2倍」より控えめになります。

これは美容外科の高年収を否定するものではありません。「若くして他科より明らかに高い年収を得られる」という事実は揺るぎません。ただ、その差を1.5倍台に補正して読むほうが実態に近いということです。

筆者の同級生や先輩で美容医療志望の人と話していて感じるのは、彼らの判断軸が「年収」ではなく「同年齢の他科同期と比較してどれだけ早く高年収を実現できるか」にあるということです。この観点では、年齢補正をしてもなお美容外科の魅力は明確に存在します。30代前半で勤務医として年収2,000万円台に乗せられる科は、保険診療系には事実上ありません。

なお、この補正にも限界があります。賃金構造基本統計調査の医師サンプルには副業・外勤収入が含まれず、美容外科のように歩合給比率が高い職種では平均値が中央値より大きく上振れする傾向があります。美容外科の中央値は、平均値より1〜2割低い水準にある可能性が高いと見ておく必要があります。

保険診療開業医と美容外科、それぞれの経済構造

ここまでは勤務医の話でした。ここからは、開業すると経済構造はどう変わるかを見ていきます。

個人立クリニック院長の時給を、第25回医療経済実態調査(R6年度)で計算してみます。

  • 分子: 個人立一般診療所の診療科別損益差額(第24回調査R4年度の絶対額を最新比率で補正)
  • 分母: 推定週50時間 × 48週 = 2,400時間(東京保険医協会2020調査より、開業医の労働時間中央値はおおよそ週50時間と推計)
診療科損益差額(R4)推定時給勤務医時給(再掲)開業/勤務 倍率
小児科3,950万円約16,500円5,800円2.8倍
産婦人科3,103万円約12,900円6,000円2.2倍
眼科3,020万円約12,600円5,400円2.3倍
内科2,922万円約12,200円(全科平均)6,300円1.9倍
耳鼻咽喉科2,626万円約10,900円
外科2,520万円約10,500円5,800-6,500円1.7倍
皮膚科2,430万円約10,100円5,800円1.7倍
整形外科2,301万円約9,600円6,700円1.4倍
精神科2,004万円約8,400円7,400円1.1倍

小児科は勤務医時代の2.8倍、精神科は1.1倍。「開業すれば儲かる」という一般論が、科による経済構造の違いを覆い隠してしまっていると言えます。

特に精神科は、勤務医のままでも時給が高水準(週47時間で1,700万円)なので、開業による経済的なうま味が小さくなります。逆に小児科は勤務医時代の時給が低めなぶん、開業による上昇幅が大きく見えます。

勤務医時代に「年収下位」だった眼科が、開業すると時給12,600円で全科3位になる点も重要です。勤務医時代の年収ランキングは、医師人生の経済価値の半分しか語っていないということになります。

この計算の限界を4点、改めて明記します。

(1) 損益差額は院長手取りそのものではありません。第25回医療経済実態調査の注記にある通り、損益差額には開設者の報酬以外に、建物・設備の現存物の価値以上の改善に充てる内部資金が含まれています。確立した個人クリニックでは、損益差額のかなりの部分が院長個人の手取り(税引前)に近づきますが、新規開業初期や設備投資期には乖離が大きくなります。

(2) 開業医の労働時間データは、東京保険医協会2020調査のみです。Nが公表されておらず、東京都に限定されたサンプルで、しかも診療科別の細分化はできません。今回の試算は「全科一律で週50時間」という強い仮定に基づいており、仮に5時間ズレれば全推計値が10%動きます

(3) 生存バイアスがあります。廃業した診療所は調査母体から除外されるため、データは「黒字で残っている診療所」だけのものです。新規開業でこの数字が再現される保証はありません。

(4) 「個人立」は青色申告ベースで、実際にはクリニック院長の多くは医療法人化しています(税制優遇のため)。医療法人立の損益差額率は個人立より大幅に低くなります(個人28.8% vs 医療法人4.8%、R6年度)。これは「院長給与が費用に計上される」ためで、実態としては医療法人立でも院長個人の経済価値は近い水準にあると考えられますが、データから直接の検証はできません。

美容外科では、勤務医のまま保険診療系の開業医と同水準の時給に到達しています。

第3章で見たように、美容外科の勤務医時給は約13,300円で、これは保険診療系の開業医の時給(8,400〜16,500円)とほぼ同水準にあります。美容外科では、開業しなくても勤務という形態で開業医水準の時給が実現しているということになります。これが美容外科に若手医師が集中する経済的理由の中核と考えられます。

筆者がクリニック経営の仕事で接する範囲で言えば、美容外科の経営者(理事長クラス)の経済価値はさらに大きく、上場企業役員クラスの所得を達成しているケースも珍しくありません。ただし、そこに到達するには勤務医として高単価帯で実績を積み、自前で開業して集患・経営に成功する、という経路を経る必要があり、勤務美容外科医の全員がそこに到達するわけではないのも事実です。

3つの視点で年収を捉え直す

ここまでの分析をまとめると、医師の経済的価値は最低でも次の3軸で見ないと判断できないことがわかります。

(1) 額面年収
転職市場で参照される基本指標です。ただし労働時間と年齢構成を無視しているため、単独では誤った結論を導いてしまいます。

(2) 時給(年収÷総労働時間)
働き方改革以降の医師にとって、より実態に近い指標です。本記事の中心軸として使いました。

(3) 可処分時間と長期収入カーブ
研究機関勤務の内科サブ専門は時給が低くても定年が長く、生涯収入では他科に近い水準に達する場合があります。逆に美容外科は若くして高時給を実現しますが、市場競争激化のリスクと、加齢に伴う技術的競争力低下のリスクを抱えています。

結論としては、全ての収入指標において秀でている診療科は存在せず、本人が求めるものによって最適な選択肢は変わるということになりそうです。面白味のない結論と言えばその通りかもしれませんが、収入という1つの軸でしかない指標の中にも、多様な考え方があると感じました。

最後に、本記事のスタンスを書いておきます。

筆者は医学部に在籍しながら、自由診療クリニックの経営支援を仕事にしています。立場としては自由診療側に近く、その意味で本記事のトーンは中立とは言い切れません。それを認めた上で、ネット上のランキング記事より、限界を明示した本記事の数字のほうが実態に近いと判断していただけるようにと思って書きました。

ネット上の医師年収ランキングを読むときは、N(サンプル数)、調査年、データ提供者、推計式の4点が確認できないものは信用しないほうがよいと考えます。これらが確認できる一次資料は、厚労省の公開ページからほぼ無料でアクセスできます。

本記事で使った推計にも、開示した通り複数の限界があります。それでも、**「美容外科の時給は他科より大きく高い」「年収ランキング上位の外科系は時給では中位以下」「美容外科の高年収には年齢補正が必要」「開業による時給上昇幅は科で大きく違う」**といった構造的な事実は、限界を踏まえてもなお揺るぎません。

ネット上のランキング記事に判断を委ねるのではなく、医師(と医学生)自身が一次資料を読み、自分のキャリアを設計する材料にしていただければと思います。

参考データ・ソース


本記事の試算には複数のデータ年代・サンプリング方法を組み合わせており、各章で限界を明記しました。記載の数値は推計値であり、絶対的な精度を保証するものではありません。著者は本記事の数値に基づく判断について責任を負いません。

この記事の監修者

太田 旭

株式会社eggside 代表取締役。医学生。
自由診療のための医師向けメディア「doctorside」を運営したり、クリニック集患支援を行っている。