本記事では、医学部に在籍する筆者が、2027年度に内科の専攻医を東京などの都市部で目指す研修医のために、シーリング制度の最新動向と応募戦略の組み立て方を整理しています。
内科は基本領域の中でも採用枠が最も大きい一方、都市部の主要都府県では専攻医の採用上限(シーリング)が課されており、希望する病院プログラムに必要書類を揃えても、そもそも応募できる枠の数が限られています。2027年度採用では、厚生労働省 医道審議会の医師専門研修部会が示した制度見直しによって、シーリングの対象範囲と、連携プログラム経由の応募経路の両方に大きな変化が生じています。
2027年度に押さえておくべき点は、大きく次の3つです。
シーリング対象都道府県の入れ替え:必要医師数と足下医師数の最新データ(2022年時点)が適用された結果、大阪府が内科シーリングから外れ、新たに鳥取県・鹿児島県が対象に加わりました。大阪府は都市部志望者にとって内科シーリングのない都道府県として選択肢に浮上しています。
連携プログラムの構造簡素化:これまで3種類に分かれていた連携系プログラム(連携プログラム都道府県限定分以外/同 都道府県限定分/特別地域連携プログラム)が、2027年度から「連携プログラム」と「特別地域連携プログラム」の2種類に統合されました。特別地域連携プログラムの連携先要件も足下充足率0.7以下から0.8以下へと緩和され、都道府県が候補とした施設まで連携先に含められるため、設定可能なルートが実質的に広がります。
東京・京都・福岡の内科は応募集中が継続:2027年度もこの3都府県の内科は引き続きシーリング対象で、例年1次募集でシーリング上限に達しやすく、2次募集以降は通常枠だけでなく連携枠を含めた選択肢の見極めが必要になります。
本記事では、2027年度内科シーリングの全体像、大阪府がシーリング対象外になったことの戦略的意味、東京・京都・福岡それぞれの内科シーリング枠の実態と戦略、連携プログラムと特別地域連携プログラムを使った迂回ルートの設計、指導医派遣加算の活用方法、出願スケジュールから逆算した1次・2次募集の動き方、よくある質問への回答を順に解説していきます。
先輩方のお役に立てれば幸いです。
→ 関連記事: 【2026年度版】シーリング制度とは?初期研修医と医学生が知るべき理想の進路を叶えるための対策
→ 関連記事:2027年度専攻医募集シーリング検索ツール
そもそも内科シーリングとは|2027年度の対象都道府県と算定方法
内科専攻医のシーリングは、特定の都道府県毎に採用枠の上限を設定し、特定地域への医師集中を抑える仕組みです。2027年度採用では、内科の対象は、東京都・京都府・和歌山県・鳥取県・岡山県・徳島県・福岡県・長崎県・熊本県・鹿児島県の10都府県となっています。2026年度までシーリング対象であった大阪府が内科シーリングから外れ、新たに鳥取県と鹿児島県が対象に加わりました。

新規追加等の情報をまとめると、2027年の内科シーリングは以下のような特徴があると言えます。
①東京都・京都府・福岡県といった都市は引き続きシーリングの対象であり、これまで同様に通常枠の制約下にある
②大阪府は都道府県単位の採用上限から外れた
③鳥取県・鹿児島県が新規追加された
また、2027年度のシーリング数の算定式は、2026年度の仕組みを基本的に継続しており、構造は次のようになっています。
- 通常プログラム基本数:当該診療科の過去3年間(令和5〜7年度)の全国専攻医採用数の平均 ×(都道府県の人口 / 全国の総人口)
- 通常プログラム加算数:過去3年間の平均採用数に達しない範囲、かつ通常プログラム基本数の15%までの範囲で、指導医派遣実績に応じて加算
- 連携プログラム数・特別地域連携プログラム数:上記の合計が直近の過去3年間の平均採用数に満たない場合、その差分の範囲で設置(地域貢献率20%以上が条件)
- 留意分:算出されたシーリング数が過去3年間の全国採用数の平均1.7%(内科では49名)に満たない場合の、前回シーリング数を超えない範囲で追加
- 常勤派遣分:医師少数区域への指導医を週5日派遣実績がある場合の追加。ただし、この枠は次年度以降のシーリング数算出の採用実績には計上されない

応募者が出願先選びで理解するべき内容は、通常プログラム(基本数+加算数)と、連携プログラム・特別地域連携プログラムの内訳の2区分です。算定式自体は基幹病院側の数字を決めるもので、応募者が直接動かせるものではありませんが、人口比按分式が採用されている結果として、人口が多い都府県ほど基本数は大きいが、過去の採用実績との差分が連携枠の余地を決めるという構造を理解しておくと、第3章以降で各都府県のシーリング数を比較するときに、その大小が応募戦略に与える意味の見通しがよくなります。
2027年は大阪府が内科シーリング対象外に
2027年度の内科シーリングで最も注目すべき変更は、大阪府の内科がシーリング対象から外れた点です。これまで大阪府は東京都・京都府・福岡県と並ぶ都市部内科シーリング都府県の一角でしたが、2027年度募集からは「採用上限を設けない都道府県」として運用されます。
なぜ大阪府は対象外になったのか
2027年度のシーリング対象選定は、2025年に算出された最新データを用いて「2022年の都道府県・診療科ごとの医師数」が「2022年の必要医師数」および「2030年の必要医師数」をいずれも上回るかどうかで判定されます。2022年時点の大阪府内科の医師数は、この基準を満たさないと判定されました。シーリング制度は元来「医師数が必要医師数を満たす都道府県診療科」を対象とする仕組みであるため、要件を満たさない以上、対象から外れる以外の選択肢がないというのが制度設計上の論理です。
ここで2026年度との比較に重要な含意があります。2026年度までは「2018年の医師数」を基準として使われていましたが、2027年度は「2022年医師数」と「2022年・2030年必要医師数」を比較する基準が採用されました。より新しい時点での医師充足度を見ると、大阪府の内科は「医師数が必要医師数を上回る都道府県」とは言えなくなった、というのが現状の認識です。

「シーリング外」が意味すること
シーリングの対象外になったことで、大阪で内科専攻医になりやすくなったと考えられますが、一方で実態はそれほど変わらないのではないか、というのが筆者の意見です。シーリング外でも各プログラムの定員自体は引き続き各基幹病院が設定するため、人気のプログラムが競争が激しい状態は依然として続くものと思われます。
東京・京都・福岡のシーリング枠の実態と戦略
東京都・京都府・福岡県は、2027年度も引き続き内科シーリングの対象となる3都府県です。都市部で内科専攻医を目指す場合、応募先の病院がこれらの3都府県のいずれかである医師は多いはずです。
本章では、各都府県のシーリング枠の実態を、通常プログラム(基本数+加算数)と連携等プログラムの構造から読み解き、応募戦略の組み立て方を整理します。
内科シーリング枠の構造比較(2027年度 案)
以下に令和8年3月18日段階での3都府県の内科シーリング枠を示します。現状2026年度から変更はありませんが、最終確定は各基幹病院プログラムの確定と日本専門医機構による承認を経た2026年夏~秋頃が予定されています。出願の際は必ず最新の情報をご確認ください。
| 都道府県 | 通常枠基本数 | 通常枠加算数 | 連携等プログラム枠 | 合計 | 連携プログラム比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 333 | 50 | 148 | 531 | 約27.9% |
| 京都府 | 59 | 9 | 11 | 79 | 約13.9% |
| 福岡県 | 120 | 18 | 13 | 151 | 約8.6% |
枠の規模は東京都が突出して大きく(531 vs 京都府79・福岡県151)、これは人口比按分式で算出される基本数が東京都の人口規模をそのまま反映するためです。一方、加算数は通常プログラム基本数の15%が上限と定められており、3都府県ともこの上限近くまで埋まっています。
東京都(連携プログラム等比率27.9%) は、連携等枠148を含めて初めて「都内に残れる確率」が見えてくる構造です。連携プログラムは、都内の基幹病院に所属したまま医師少数区域の連携施設で一定期間研修を行うことで採用が成立する仕組みであり、研修内容の質よりも「採用枠のカウントの仕方」に違いがある制度設計です。通常383枠には全国から応募が集中するため、第1志望の基幹病院に通常枠単独で入れる確率は、地方と比較して下がる傾向にあります。
京都府(連携プログラム等比率13.9%) は、通常枠68・連携等枠11と全体規模が小さく、連携枠の絶対数も限定的です。京都府内には京都大学医学部附属病院と京都府立医科大学附属病院の2大学病院に加え、市中基幹施設が分布していますが、採用は各プログラム統括責任者の裁量で決まる仕組みため、早期の段階での情報収集がポイントになります。
福岡県(連携プログラム等比率8.6%) は、通常枠138・連携等枠13です。九州内の医師少数県(大分・宮崎・鹿児島など)との地理的近接性により、連携プログラム経由で福岡に戻る設計の自由度は相対的に高い地域です。ただし、連携枠13の絶対数自体は小さいため、活用する場合には早期の情報収集が必要です。
3都府県のいずれを志望する場合でも、通常プログラム枠だけでなく加算後の最終的なシーリング数を確認すること、連携プログラム経由の研修内容を出願前にプログラム冊子で確認すること、そして第1志望が不採用となった場合の2次募集候補をあらかじめ準備しておくこと、の3点は共通して行うべき行動になります。
連携プログラムと特別地域連携プログラムの違いと活用法
シーリング対象の都府県で内科専攻医を目指す場合、出願先を「通常プログラム」だけに絞ると、最も競争が激しい枠で全国の志望者と争うことになります。シーリング数の内訳には「連携プログラム」「特別地域連携プログラム」という別系統の枠があり、それぞれ研修先・研修期間に固有の要件がある代わりに、通常プログラム枠とは異なる選考プールに乗ることができます。2027年度から構造が簡素化されたため、これら2つのプログラムの仕組みを理解し、その上で出願先を組み立てることが重要になります。
2027年度の連携プログラム・特別地域連携プログラムの構造
2027年度から、内科シーリング対象都府県で設定できる連携系プログラムは「連携プログラム」と「特別地域連携プログラム」の2種類に集約されました。2026年度までは「連携プログラム(都道府県限定分以外)」「連携プログラム(都道府県限定分)」「特別地域連携プログラム」の3種類に分かれていましたが、「連携プログラム(都道府県限定分)」と「特別地域連携プログラム」が統合され、新しい「特別地域連携プログラム」として再構成されます。
| 区分 | 連携先 | 連携先での研修期間 | 採用数の数え方 |
|---|---|---|---|
| 連携プログラム | シーリング対象外の都道府県 | 1年6カ月以上 | シーリング数の内訳に含まれる |
| 特別地域連携プログラム | 足元充足率0.8以下(小児科は0.9)の都道府県 | 1年以上 | シーリング数の内訳に含まれる |
連携プログラム:シーリング対象外都道府県での1年6か月研修
連携プログラムは、シーリング対象都府県の基幹病院に所属したまま、シーリング対象外の都道府県の連携施設で1年6か月以上の研修を行うことで採用が成立する仕組みです。例えば東京都の基幹病院は、神奈川県・千葉県・埼玉県や地方の医師充足度の低い県の連携施設と組み合わせてプログラムを設計します。
応募者にとっての利点は次の3点です。
- 東京都・京都市・福岡市内などの基幹病院に所属する形が維持される
- 連携先での研修期間中は、医師少数地域の臨床経験を積むことができる
- 通常プログラム枠とは別の選考プールに乗ることになるため、応募集中度合いが分散する可能性がある
注意点として、連携先での研修期間は内科専門研修3年間のうちの1年6か月以上を占めるため、研修期間の半分以上を都市部から離れた地域で過ごすことを許容できるかが判断の核心になります。また、連携先施設で経験できる症例数や指導体制は都市部基幹病院より手厚いケースも多いため、連携先施設についても事前に確認しておくことが必要です。
特別地域連携プログラム:2027年度の要件緩和で連携先が拡大
特別地域連携プログラムは、より医師充足度が低い地域での研修を組み込むプログラムで、足下充足率0.8以下の都道府県のうち、当該都道府県が候補とした施設で1年以上の研修を行います。2026年度までの「足下充足率0.7以下の都道府県の医師少数区域」から、2027年度は要件が2点緩和されました。
- 足下充足率の基準:0.7以下 → 0.8以下に緩和(小児科は0.8以下→0.9以下)
- 連携先施設の指定:「医師少数区域にある施設」 → 「都道府県が候補とした施設」に変更
足下充足率0.8以下の基準緩和により、特別地域連携プログラムの連携先候補となる都道府県は、2026年度の9都道府県(青森・岩手・秋田・山形・福島・茨城・埼玉・新潟・静岡など内科の0.7以下該当県)から大幅に拡大します。また、連携先施設の選定基準が「医師少数区域内」から「都道府県が候補とした施設」に変わることで、医師少数区域以外の地域の施設も都道府県判断で候補に含められるようになりました。これは基幹病院側にとって連携プログラム設計の自由度が大幅に上がる変更で、結果として応募者にとっても選択肢が広がる方向の制度変更です。
以下に令和8年3月18日段階で公表されている連携系プログラム枠の内訳は以下の通りになります。
| 都府県 | 連携プログラム | 特別地域連携プログラム |
|---|---|---|
| 東京都 | 78 | 70 |
| 京都府 | 6※ | 6※ |
| 福岡県 | 7※ | 7※ |
※印の京都府、福岡県の連携枠数は2025年度の各連携プログラムの枠数割合に応じて算出した際に生じる端数を差し引くため、連携枠・特別連携枠のいずれかで数値より1枠少なくなることを示します。
この内訳から見えてくるのは、東京都では特別地域連携プログラム枠が約70と相当な規模になる一方、京都府・福岡県では特別地域連携プログラム枠が一桁にとどまる点です。京都府・福岡県を志望する応募者にとっては、特別地域連携プログラムの枠は希少資源であり、出願段階で各基幹病院のプログラム構成を確認する必要があります。
連携プログラム・特別地域連携プログラムを応募先に組み込む際の判断軸
迂回ルートとしてこれらのプログラムを活用する際の判断軸は、次の3点です。
- 研修期間の半分以上を都市部以外で過ごすことを許容できるか:連携プログラムは1年6か月以上、特別地域連携プログラムは1年以上、シーリング対象外地域や医師充足度の低い地域での研修が必要になります。この期間を「都市部から離れる時間」と捉えるか「地方医療を学ぶ機会」と捉えるかで、プログラム選択の優先順位が自ずと決まります。
- 連携先で経験できる症例とサブスペシャルティ志向の整合性:内科専門研修3年間のうち相当部分を連携先で過ごすため、連携先施設の症例構成・指導体制・サブスペシャルティ連動研修との接続を、出願前にプログラム冊子や病院見学で確認し、自身のキャリアの方向性と照らし合わせることがミスマッチを防ぐ鍵になります。
- 基幹病院の連携先施設の地理的範囲:連携先の地域が、生活基盤を一時的に移すことを許容できる範囲かどうかも判断基準の一つになります。
指導医派遣加算|シーリング枠を上乗せする仕組み
シーリングは「都市部の採用枠を一律に絞る」仕組みとして語られがちですが、2026年度採用から、基幹病院の派遣実績に応じて通常枠を上乗せできる「加算」の制度が導入されました。2027年度もこの仕組みは継続されており、応募先を選ぶ際は通常枠基本数だけでなく加算後の最終的なシーリング数を踏まえる必要があります。
指導医派遣加算は、シーリング対象外の都道府県や医師少数区域へ専門研修指導医を派遣している基幹病院に対して、通常プログラム基本数の最大15%を上限に枠を上乗せする制度です。加算分は派遣実績に基づいて都道府県単位で配分されます。2027年度の加算数は、2026年度のシーリング算出に用いた指導医派遣実績がそのまま継続使用されることが厚生労働省資料で明示されており、3都府県の加算数は2026年度と同水準で推移します。
3都府県の加算数(2027年度)
| 都府県 | 通常枠基本数 | 加算上限 | 実際の加算数 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 333 | 50 | 50 |
| 京都府 | 59 | 9 | 9 |
| 福岡県 | 120 | 18 | 18 |
3都府県とも、実際の加算数が加算上限と一致しています。これまでの傾向からして、これら3都府県では、基本的に加算上限まで枠が加算される傾向にあり、「通常枠基本数+加算分」の最終枠が、現状の枠配分の上限とほぼ等しいと考えてよい状況です。
医師少数区域へ常勤指導医派遣による追加分
上記の加算分とは別に、2026年度から新設された「医師少数区域への常勤指導医派遣による追加分」があります。これは、専門研修指導医(常勤)を、シーリング対象外都道府県の医師少数区域へ週5日相当で派遣している実績に応じて、シーリング数を別途追加する仕組みです。次年度以降のシーリング数算出における採用実績には計上されない枠として機能します。
2027年度の追加分も、2026年度の実績データがそのまま継続使用されます。3都府県の追加数は次の通りです。
| 都府県 | 追加数 |
|---|---|
| 東京都 | 2 |
| 京都府 | 3 |
| 福岡県 | 0 |
東京都と京都府が追加分を獲得している一方、福岡県は医師少数区域への常勤派遣実績が3人・年と少なく、追加分は0となっています。絶対数としては東京都+2、京都府+3と限定的ですが、加算上限まで埋まっている都府県では追加分が実質的な枠拡大に直結します。
ただこの辺りの追加は2〜3程度の差しか生まれないため、特に気にする必要はなさそうです。
応募者側の確認手順
加算の仕組みを踏まえた出願戦略は、次の3点を順に確認するのが効率的です。
都道府県全体の加算規模を確認:最新の厚労省資料などで志望都府県の加算数と追加数を把握し、通常枠+加算後の最終シーリング数で母集団を見積もりましょう。
基幹病院ごとの連携施設リストを確認:シーリング対象外都道府県や医師少数区域への連携施設を多く抱える基幹病院ほど派遣実績を積みやすく、加算枠の獲得力が高い傾向にあります。
応募締切前に最終採用上限を再確認:都道府県別のシーリング数案は2026年3月時点で公表済みですが、各基幹病院プログラムごとの最終的な採用数は、日本専門医機構による研修プログラム承認(2026年秋頃)を経て最終確定します。志望病院の採用人数は出願前に再確認するのが安全です。
応募スケジュールと出願方針
内科専攻医の採用試験は、日本専門医機構が定める統一スケジュールに沿って進みます。2026年5月現在、2027年度採用のスケジュールは大まかにしか公表されていませんが、例年11月頃に1次募集、12月頃に2次募集が行われています。都市部で内科を目指す場合、この約2ヶ月の枠組みの中で、いかに早く動き出して情報差を埋めるかが合否を左右します。
1次募集の最大の制約は「1プログラムのみ応募可」というルールです。基本領域ごとに、応募できるプログラムは1つに限定されており、複数の基幹病院に同時応募して滑り止めを確保するという発想が使えません。研修医側の動きで重要なのは、1次募集の応募締切(例年11月中旬)までに志望先の判断材料を揃え終えること、そして1次募集で不採用となった場合の2次募集候補を事前に決めておくことの2点です。
実務上のスケジュールは以下の順で逆算するのが現実的です。
1. 春〜初夏(4〜7月)に制度情報の確認と志望先の情報を収集する
厚労省の公表データから志望都道府県のシーリング対象や加算後のシーリング数などを確認します。
また、レジナビや内科専攻医netなど専攻医向け情報サイトで、各プログラムの内容や定員・連携先・直近採用実績を収集し、応募候補のリストを作成します。
2. 夏(7〜9月)に病院見学とプログラム内容を確認する
専門研修プログラム検索システム(日本専門医機構)で各基幹病院プログラムが公開されたら、志望候補先で実際に病院見学・説明会に参加します。
3. 秋(9〜10月)に第1志望と第2志望以下を確定する
研修プログラムが日本専門医機構により承認されると、各プログラムの最終的なシーリング数と募集要項が確定します。
この時点で、第1志望(1次募集に出すプログラム)と、第2志望(1次募集不採用時の2次募集候補)を確定させます。
なお、各プログラムの過去の倍率や採用実績は日本専門医機構が公表していないため、公的資料上の「前年度の倍率」を入手することは原則できません。志望病院の事務局・指導医に直接問い合わせる、あるいは病院見学時に過去採用者の出身などを確認する程度の情報収集にとどまります。
想定される質問と回答
ここでは、都市部で内科専攻医を目指す研修医から実際に寄せられる質問のうち、応募戦略の判断に直結する3つを取り上げ、制度上の根拠と現場での運用実態をあわせて整理します。
Q1. 地域枠の出身ですが、東京や都市部で内科専攻医を目指すことは可能ですか?
地域枠出身者は、一定の条件を満たす場合にシーリングの対象外として扱われます。具体的には、都道府県と卒業後一定期間の就業契約を締結している、または自治医科大学を卒業している、のいずれかに該当する医師のうち、専攻医期間に医師少数区域または医師少数スポットで専門研修を行う予定の場合に、シーリングの採用上限から除外されます。
「地域枠出身であればシーリングの影響を受けない」という単純な解釈は誤りで、上記の医師少数区域での研修予定要件が必須である点に注意してください。地域枠の義務年限内の都道府県内勤務予定であっても、医師少数区域での研修要件を満たさない場合は、通常のシーリング対象として扱われます。このルールは2026年度・2027年度ともに変更されていません。
Q2. シーリング対象外の都道府県では「採用上限なし」だが、本当に自由に応募できるのか?
シーリング対象外の都道府県では「都道府県全体としての採用上限」はありませんが、各基幹病院プログラムにはそれぞれ独自の定員が設定されており、その定員を超えての採用は行われません。「シーリング外=枠に余裕がある」という認識は、特に人気プログラムには当てはまりません。
例えば2027年度から内科シーリング対象外になる大阪府の場合、府内の各基幹病院は引き続き独自の定員設計に基づいて採用を行います。シーリング除外による恩恵は、基幹病院側が定員を増やす判断をした場合に応募者にも還元されます。応募戦略上は「シーリング対象=競争が激しい」「シーリング対象外=必ず入れる」という二分法ではなく、各プログラムの定員と応募集中度合いを個別に評価する視点が必要です。
Q3.連携プログラムを選んだ場合、研修中の所属はどこになるのか?
連携プログラムを選んだ場合、研修の所属は連携元の基幹病院(シーリング対象都府県)となり、その所属を保ったまま、研修期間の一部を連携先施設で過ごす形になります。例えば東京都の基幹病院の連携プログラムを選んだ場合、応募者は東京都の基幹病院に採用され、3年間の専門研修のうち1年6か月以上を連携先(神奈川・千葉・埼玉や地方医師少数県の施設)で過ごす形です。
採用枠のカウントとしてはシーリング対象都府県の枠内ですが、実際の研修期間の半分以上は連携先の地域で過ごすことになるため、生活基盤や日常業務環境の変化を見越した準備が必要です。連携先施設での研修内容、指導体制、サブスペシャルティ連動研修との接続は、応募前にプログラム冊子と病院見学で確認することが推奨されます。
まとめ|2027年度の応募戦略
2027年度の内科シーリングは、2025年算出の最新データに基づく対象都府県の見直しと、連携プログラム構造の簡素化という2つの大きな変更を含んでいます。都市部で内科専攻医を目指す研修医にとって、応募戦略上の重要なポイントは次の3点です。
- 大阪府が内科シーリング対象外になったが、人気基幹病院の競争は依然として続くことを前提に、各プログラム単位での定員と応募集中度を個別に評価する
- 東京・京都・福岡を志望する場合は、通常枠だけでなく連携プログラム・特別地域連携プログラムを含めた選考プールの全体像を把握する。特に東京都の連携等枠148・京都府の連携等枠11・福岡県の連携等枠13という絶対数を踏まえ、出願段階で各基幹病院のプログラム構成を確認する
- シーリング数案は2026年3月時点で都道府県別に公表済みだが、各基幹病院プログラム別の最終的な採用数は機構承認(2026年秋頃)を経て確定するため、応募締切の直前まで最新の確定値を確認する
最終的な応募戦略を固める際は、応募締切の2週間前を目安に厚労省PDF・日本専門医機構サイトで各プログラムの最終的なシーリング数を確認することを推奨します。
参考資料・出典
- 厚生労働省|令和7年度第2回 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会 資料2-1「令和9(2027)年度のシーリングについて」(令和7年7月24日)https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/001521962.pdf
- 厚生労働省|令和7年度第4回 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会(令和8年1月21日) 厚生労働省|令和7年度第5回 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会 資料1-1「令和9(2027)年度専攻医募集について」(令和8年3月18日) https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/001675399.pdf
- 一般社団法人 日本専門医機構(https://jmsb.or.jp/)
- m3.com|専攻医のシーリング、内科で大阪が外れる、2027年度から
- GemMed|2027年度から専門研修始める専攻医の採用枠、「指導医派遣実績」を踏まえた上乗せを行い、地域連携も推進―医師専門研修部会
- GemMed|新専門医の専攻医採用上限で「指導医派遣実態」等反映へ

太田 旭
株式会社eggside 代表取締役。医学生。
自由診療のための医師向けメディア「doctorside」を運営したり、クリニック集患支援を行っている。