本記事では、医学部に在籍する筆者が、小児神経を専門にしようと考えている専攻医と研修医のために、小児神経専門医の取得までの年数と、取得後の更新・維持の条件について、日本専門医機構の一次資料を読み解き、整理しています。
以下の数値は、断りのない限り、日本専門医機構がまとめた「日本専門医制度概報 令和7年度版」によります。小児神経専門医を担当するのは日本小児神経学会です。この資料のページはどの欄も【旧制度】と【新制度】に分かれており、本記事も学会だけが認定する側を旧制度、学会と日本専門医機構の両方が認定する側を新制度と書きます。研修は新制度が3年間、旧制度が5年間です。新制度で初期研修2年、小児科3年、小児神経3年と続けて積むと、卒業後8年を終えるころに年数の条件がそろいます。旧制度は小児科の専門研修と重ねられますが、何年を重ねられるのかが資料にないため、卒業後7年から10年の幅になります。
小児神経専門医で押さえておくべき点は、次の3つです。
- 制度が2つ並んでいる:新制度は3年間の研修で、基本領域の研修と重ねられません。旧制度は5年間の研修で、小児科の専門研修と重ねられます
- 症例要約が受験資格に直結する:どちらの制度でも症例要約30例と詳細報告5例を提出します。新制度では症例要約が100点満点で点数化され、60点以上が受験資格の必要条件です
- 倫理の記載が採点対象:症例要約に倫理的見地からの所見を書くことが必須項目で、採点項目にもなっています。旧制度と新制度のどちらにも書かれています
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旧制度と新制度の違いと、取得までの年数
認定する主体は、旧制度が日本小児神経学会だけで、認定証について資料は「日本専門医機構認定ではない」と明記しています。新制度は学会と日本専門医機構の両方が認定します。入口になる資格は、旧制度が日本小児科学会または日本リハビリテーション医学会の専門医、新制度は小児科専門医だけです。研修年数と連動研修も違います。連動研修とは、基本領域の専門研修とサブスペシャルティ領域の研修を重ねて進める方式です。旧制度は5年で小児科専門研修との連動研修を認め、新制度は3年で「連動研修は認めない」と書かれています。
旧制度でこれから受験できるのか、制度が切り替わる時期も資料にありません。進路を決める前に、学会に受け付けの状況を確かめてください。
年数は制度ごとに数えます。入口の小児科専門医について、資料の小児科専門医のページは研修歴を「5年以上(卒後2年の「初期臨床研修」の期間を含む)」としています。起点は卒業で、初期研修の2年を除いた残る3年が小児科の専門研修にあたります。
新制度は、この5年に3年を足す形です。初期研修2年、小児科3年、小児神経3年を続けて積むと、卒業後8年を終えるころに年数の条件がそろいます。ただし開始の時期には幅があり、資料は、新制度の研修を始める時点までに「小児科専門研修が修了しているあるいは修了見込みであること」と書き、「小児科専門医資格は小児神経専門医試験を受験するまでに取得していればよい」と添えています。修了見込みの段階から始められるということで、どこまで前倒しできるのかは書かれていません。
旧制度は、5年のうち何年を重ねられるのかが書かれていないため、年数を1つに決められません。まったく重ねなければ初期研修2年、小児科3年、小児神経5年で卒業後10年、小児科の専門研修3年をすべて重ねられれば卒業後7年です。もう1つの入口であるリハビリテーション科も資料によると卒後5年間の研修ですが、旧制度が認めているのは小児科専門研修との連動研修で、リハビリテーション科の研修と重ねられるのかは書かれていません。
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ここで示したのは年数の条件がそろう時期です。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
受験に何が要るか、研修で何を経験するか
資料は申請資格を新制度に8つ、旧制度に6つ挙げています。新制度の条件は次のとおりです。
- 日本小児科学会が認定する小児科専門医の資格を取得していること
- 研修基幹施設または研修連携施設で3年間の所定の研修を修了し、小児神経の臨床実績があること
- 専門医試験の申し込み締め切り日までに、継続して3年間以上、学会の会員であること
- 研修カリキュラムのA/a区分について、「Ⅰ.総論」はすべて、「Ⅱ.疾患各論」は半数以上を経験していること
- 専門医としての態度と倫理性に問題がないという評価を、研修基幹施設の専門研修統括責任者から受けていること
- 研修開始後に、学会の学術集会、または学会が研修単位の交付を認めた地方会、関連学会、国際学会で、筆頭演者として2回以上発表していること。同じ内容の発表は数えられません
- 研修基幹施設または研修連携施設で自ら診療に従事し、小児神経疾患患者30例の症例要約と、そのうち症例詳細報告5例を提出すること
- 研修開始から試験の申し込み締め切りまでに、査読制度のある医学雑誌に受理された小児神経学の論文が筆頭で1編以上あること。学会発表と論文は同じ内容でもかまいません
施設の呼び名も分かれ、旧制度は研修認定施設と研修関連施設、新制度は研修基幹施設と研修連携施設です。旧制度の申請資格6つは、連続5年以上の会員歴、研修認定施設または研修関連施設での5年間の所定の研修の修了、日本小児科学会または日本リハビリテーション医学会の専門医資格、症例要約30例と症例詳細報告5例の提出、研修認定施設の指導責任者または小児神経専門医の資格を持つ学会評議員の推薦状、直近5年間で50単位以上です。
研修の中身は「小児神経専門医のための到達目標・研修項目」という文書にあり、資料によると、研修内容と疾患名を総論15領域と疾患群21領域に区分し、知識と技能・経験に到達の水準を設けています。知識の最上位はA(内容を熟知している)、技能・経験の最上位はa(主治医または担当医として臨床経験があり、独立して診療の判断ができる)で、この組み合わせが申請資格に出てきたA/a区分です。疾患各論の半数以上を数える対象が21領域なのか、その中の項目なのかは書かれていません。
提出する症例要約について、書式と分量、30例をどの期間から選ぶのか、疾患の内訳に指定があるのかは、資料に載っていません。症例要約には倫理的見地からの所見を書くことが必須で、資料は両方の制度の欄で「必須項目となっており、採点項目となっている」と書いています。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
試験は書類審査、筆記120題、面接の3つ|合格率は74.0%から88.7%
どちらの制度も試験は書類審査、筆記試験、面接試験の3つで、書類審査の対象は症例要約30例と症例詳細報告5例です。筆記試験はどちらも多肢選択式に準じた形式で120題です。新制度は内訳まで書かれていて、基礎知識を問う一般問題が80問100分間、症例解決能力や画像判読などの能力を問う画像・症例問題が40問80分間で、合わせて120題、180分です。旧制度の欄は「一般問題、症例・画像問題を含む」とあるだけで、内訳と試験時間は書かれていません。
合否の決め方も制度で違います。新制度は、症例要約が100点満点で点数化され、60点以上であることが専門医受験資格の必要条件とされ、筆記試験は60%程度の正答率で合格、面接試験では倫理面が評価されます。旧制度は書類審査と筆記試験のポイントを合計して総合判定し、面接試験には、面接委員2名が合格点以下と評価した場合は面接だけで不合格とする規定があります。試験の実施時期と回数、不合格だった場合の扱いは、どちらの制度も載っていません。
専門医試験の結果は、直近3年度分が資料に載っています。
- 令和4年度(2022年度):受験者47人、合格者39人、合格率83.0%
- 令和5年度(2023年度):受験者50人、合格者37人、合格率74.0%
- 令和6年度(2024年度):受験者53人、合格者47人、合格率88.7%
3年を合わせると受験者150人に対して合格者123人で、通した合格率は82.0%です。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
小児神経専門医の更新・維持の条件(5年ごと・50単位)
更新の周期はどちらの制度も5年です。
旧制度の更新は、5年間に50単位以上を集める形です。ただし65歳以上は30単位以上に軽減されます。50単位のうち、学術集会、小児神経学セミナー、学会が認めた地方会または国際関連学会への出席が合計20単位以上、そのうち学会の学術集会への出席が1回以上必要です。単位の割り当ては、学術集会への参加が8単位、地方会への参加が5単位、学術集会での筆頭者としての発表が4単位、地方会での筆頭者としての発表が3単位、筆頭者としての論文発表が12単位です。
新制度も5年ごとに合計50単位以上ですが、内訳の決め方が違います。資料は4つの区分を挙げています。
- 診療実績:50症例の症例要約リストで10単位
- 共通講習:医療安全講習会、感染対策講習会、医療倫理講習会などで最大10単位。基本領域の更新に提出した共通講習の単位を、小児神経専門医の更新にも重ねて使ってよいとされています
- 領域講習:学会が事前に承認認定した年次学術集会、地方会、研究会の講習や講演が1つにつき1単位、または学会が作成したE-learningなどで20単位以上
- 学術業績・診療以外の活動実績:学会参加、学会発表、論文発表などで0〜10単位以上。資料はこの書き方のまま載せており、10単位が上限なのか下限なのかは読み取れません
この4つの合計が50単位以上であることが条件で、どの枠をどれだけ積むのかは資料の書き方からは決まりません。旧制度から新制度への移り方も書かれていません。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
専門医は1,312人、旧制度の研修施設は710
小児神経専門医は2025年5月現在で1,312人です。資料の一覧表は専門医数を、学会が認定した学会認定専門医と日本専門医機構が認定した機構認定専門医の2列で数えていて、1,312人は学会認定専門医数の欄のものです。機構認定専門医数の欄は「――」で、これが0人を指すのかは書かれていません。
研修施設の数は旧制度の欄にだけあり、2025年8月現在で研修認定施設が146、研修関連施設が564の計710です。新制度の研修基幹施設と研修連携施設は、条件は書かれていますが施設数の記載がありません。
施設に求められる条件として、資料は旧制度と新制度のどちらの欄にも次を挙げています。医育機関附属病院や臨床研修病院、小児総合医療施設またはこれらに準じる病院であること、過去1年間の小児神経疾患患者の実数が月平均50名以上あり多様な小児神経疾患を診療していること、学会発表や論文が出ていて症例検討会などの教育行事を行っていること、外来と入院の設備や神経生理学的検査機器などがそろっていることです。責任者は旧制度が指導責任者、新制度が指導医の資格を持つ専門研修統括責任者で、どちらも責任者を含めて専門医が2人以上いることが望ましいとされています。
専攻医を指導する側の条件も制度で違います。旧制度の指導責任者には、小児神経専門医であることに加えて、医学部卒業から10年以上、過去連続5年以上の会員歴、過去5年以内の小児神経学の論文3編以上(原著論文を含む)、過去5年以内の発表演題3題以上、研修認定施設での常勤またはそれに準じる勤務実態が求められます。新制度の指導医は、専門医であることに加えて、所属施設での常勤またはそれに準ずる勤務実態、1回目以上の資格更新、過去5年間に1件以上の小児神経学に関する学術業績(発表でも論文でもよく、筆頭である必要はなく、査読の有無も言語も問われません)の3つをすべて満たす人が認定を受けられます。
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出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
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まとめ|小児神経専門医を目指すなら先に決めること
- どちらの制度で進むか:旧制度の認定証は機構認定ではないと資料に明記されています。切り替えの時期が資料にないため、まず学会に受け付け状況を確かめてください
- 年数:新制度は続けて積めば卒業後8年で年数の条件がそろいます。修了見込みの段階から研修を始められるため、どこまで前倒しできるかは資料にありません。旧制度は重ねられる年数が資料にないため確定できず、卒業後7年から10年の幅になります
- 入口と会員歴:新制度は小児科専門医だけで会員歴3年以上、旧制度は日本リハビリテーション医学会の専門医からも入れて会員歴5年以上です。旧制度は受験の時点で直近5年間の50単位以上も必要です
- 提出物と試験:どちらも症例要約30例と詳細報告5例で、倫理的見地からの所見は必須の採点項目です。新制度は症例要約60点以上が受験資格の必要条件です。試験は書類審査、筆記120題、面接の3つです
- 合格率:直近3年度は83.0%、74.0%、88.7%で、3年を通すと82.0%です
- 維持と規模:どちらの制度も5年ごとに50単位以上で、旧制度は65歳以上が30単位以上に軽減され、新制度の欄に同じ規定は書かれていません。専門医は学会認定の欄で1,312人、研修施設は旧制度の710施設だけが資料に載っており、新制度の施設数は学会で確かめてください
資料に書かれていない切り替えの時期や症例要約の書式は、日本小児神経学会の専門医制度規則と、領域ごとに研修内容や施設の要件を定めた整備基準「サブスペシャルティ領域専門研修整備基準 小児神経領域」で確認してください。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
参考文献
- 日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」. https://jmsb.or.jp/wp-content/uploads/2026/03/gaiho_2025.pdf
- 日本小児神経学会. https://www.childneuro.jp/

太田 旭
株式会社eggside 代表取締役。医学生。
自由診療のための医師向けメディア「doctorside」を運営したり、クリニック集患支援を行っている。