本記事では、医学部に在籍する筆者が、脳神経内科を専門にしようと考えている専攻医と研修医のために、神経内科専門医の取得までの年数と、取得後の更新・維持の条件について、日本専門医機構の一次資料を読み解き、整理しています。
以下の数値は、断りのない限り、日本専門医機構がまとめた「日本専門医制度概報 令和7年度版」によります。神経内科専門医は、受験時に医学部または医科大学を卒業後6年以上の臨床研修歴が必要で、最短では卒業から6年を終えるころに年数の条件が揃います。あわせて、学会が認定した施設で通算3年以上の研修が必要です。この3年を6年の内側で積めるのかは資料に書かれていません。試験の実施時期も、合格から認定までの期間も資料にないため、卒業から何年目に名乗れるかは確定できません。
日本神経学会が認定する資格の名前は神経内科専門医、日本専門医機構が領域の名前として挙げているのは脳神経内科です。本記事では、領域を脳神経内科、資格を神経内科専門医と記します。
神経内科専門医で押さえておくべき点は、次の3つです。
- 年数:受験時に卒業後6年以上の臨床研修歴と、学会が認定した施設で通算3年以上の研修が必要です。この3年を6年の内側で積めるのかは資料に書かれていません。施設の組み合わせによっては合計4年以上、経路によっては6年以上になります
- 試験に実技がある:二次試験で神経学的診察法の実技試験が課されます。口頭試問は、事前に提出した自験症例要約にもとづきます
- 更新を落としたときの扱いが段階的:5年で50単位を満たせないとき、願い出れば1年間の保留が認められます。単位とは、更新要件として学会が活動ごとに割り当てたポイントです。保留の間は専門医の広告ができますが、続く最長3年間の資格停止ではできません。停止が3年を超えると資格を失います
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神経内科専門医の申請資格と取得までの年数
資料の原文は「受験時に医学部および医科大学を卒業後6年以上の臨床研修歴を有し」で、起点は医学部の卒業です。臨床研修歴に何が入るのかは定義されておらず、初期研修の2年をこの6年に足すとも書かれていません。卒業してすぐに初期研修へ進んだ人なら、卒業後6年を終えるころに条件が揃います。
申請には年数以外にも次の項目を満たす必要があります。
- 日本国の医師免許証を持ち、日本内科学会認定内科医(内科専門医)であること。認定内科医とは、機構認定の内科専門医が始まる前から日本内科学会が認定してきた資格です
- 受験時に卒業後6年以上の臨床研修歴があり、日本神経学会の正会員歴が3年以上あること
- 学会が認める4区分の施設で、細則に定める所定の期間の研修を終了していること。細則とは、学会が規則の細かい運用を定めた文書です
- 学会が定めた研修カリキュラムを満たしていること
- 研修カリキュラムの全項目のうち80%以上を満たしたことを、研修施設の責任指導医が証明する「研修終了証明書」を提出すること
資料の原文は1項目めを「日本内科学会認定内科医(内科専門医)」とかっこ書きのまま記しており、どちらを持っていれば申請できるのかは書き分けられていません。
資料は、基本領域とサブスペシャルティ領域の専門研修を重ねて進める連動研修を行う領域に脳神経内科を挙げています。ただし、神経内科専門医の個別ページに連動研修という言葉はなく、これを選んだ場合に卒業後6年という条件が変わるのかも書かれていません。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
研修する施設は4区分、研修歴の組み合わせは4通り
日本神経学会が認定する施設は、2021年度から次の4区分になっています。
- 教育施設:指導医が1名以上、指導医を含めて専門医が3名以上、常勤で勤務している病院。資料はここで単に「専門医」と書いていて、神経内科専門医を指すと読めますが明示はありません。あわせて、神経内科または関連する診療科として10床以上の病床を持つか、年間100名以上の入院があることが必要です
- 准教育施設:指導医が1名以上、常勤で勤務している病院。病床数と入院患者数の条件は教育施設と同じです
- 教育関連施設:専門医が1名以上、常勤で勤務している病院または診療所。資料は「原則として指導医」と添えています。教育施設と連携して教育カリキュラムの一部を担います
- 特別連携施設:資料は名前を挙げるだけで、満たすべき条件を書いていません
受験に必要な研修歴は、この4区分の組み合わせで4通り示されています。
- 教育施設で3年以上
- 教育施設で2年以上、かつ准教育施設を含めて合計3年以上
- 教育施設で2年以上、かつ准教育施設、教育関連施設、特別連携施設で4年以上
- 教育施設が2年未満の場合は、准教育施設を含めて合計4年以上。准教育施設だけで4年を積む形も含みます
最も短いのは、教育施設で3年以上の経路と、教育施設で2年以上かつ准教育施設を含めて合計3年以上の経路です。教育施設が2年未満の場合は合計4年以上で、研修歴の3番目は文字どおり読むと合計6年以上になります。何が経路を分けるのかは資料に書かれておらず、該当する研修歴を判断する決まりも「細則に定める」とあるだけです。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
試験は一次が200問、二次が実技と口頭試問
試験は二段階で、一次が筆記、二次が資料のいう面接試験です。
一次試験は多肢選択式で、合計200問です。内訳は、神経内科専門医として必要な知識を問う必修問題が100問、一般問題と症例問題が合わせて100問です。一般問題と症例問題の違いも、それぞれ何問かも資料に載っていません。
一次試験に合格した人が、二次の面接試験に進みます。面接試験の中身は口頭試問と実技試験で、実技試験では神経学的診察法が課されます。口頭試問では、自分が担当した症例をまとめて試験前に提出する自験症例要約にもとづいて、鑑別診断の進め方や、検査と治療の計画の立て方が問われます。この症例要約は試験委員が事前に査読します。
症例要約の提出数、実技試験と口頭試問の配点、合格の基準、試験の実施時期と回数、不合格だった場合に一次試験から受け直すのかは、いずれも資料に載っていません。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
認定試験の合格率は3年とも80%台
資料が載せている直近3年度の結果は次のとおりです。
- 令和4年度(2022年度):受験者272人、合格者220人、合格率80.9%
- 令和5年度(2023年度):受験者252人、合格者204人、合格率81.0%
- 令和6年度(2024年度):受験者246人、合格者204人、合格率82.9%
不合格は令和4年度52人、令和5年度48人、令和6年度42人です。3年を合わせると受験者770人に対して合格者628人、不合格142人で、通した合格率は81.6%です。受験者数は272人、252人、246人と減っていますが、理由は書かれていません。
一次試験と二次試験を分けた受験者数や合格者数は資料にないため、上の受験者数がどちらの段階の人数を指すのかは分かりません。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
神経内科専門医の更新・維持の条件(5年ごと・50単位)
神経内科専門医は5年ごとの更新制で、5年間で50単位を取得する必要があります。単位が付くのは、日本神経学会が主催する行事、関連学会への参加、発表、論文の掲載などです。資料の「関連学会の名称」欄には14学会が並びますが、これが単位の対象と同じかは書かれていません。
50単位のうち30単位は、日本神経学会が主催する行事への参加または発表で取ります。残る20単位は関連学会への参加などでも取れます。行事や論文にそれぞれ何単位が付くのかは資料に載っていません。
50単位に届かなかった場合は、次の段階をたどります。
- 日本神経学会に置かれた認定更新委員会に願い出ると、1年間の保留が認められます。この間は専門医の広告ができます
- 保留の期間が過ぎると、最長3年間の資格停止になります。この間は専門医の広告ができません
- 資格停止が3年を超えると、資格喪失になります
資格を失うまでの猶予は最長4年です。広告できるかどうかは保留と資格停止の境目で切り替わります。保留を願い出なかった場合の扱いは資料に書かれていません。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
専門医は6,868人、研修施設は801
神経内科専門医は、2025年8月現在で6,868人です。この数字は資料の一覧表で学会認定専門医数の欄に入っており、機構認定専門医数の欄は「――」です。この記号が0人を指すのか、集計していないことを指すのかは書かれていません。
研修施設は基幹研修施設437、関連施設364の総数801です。ただし、基幹研修施設と関連施設という呼び方は、受験資格に出てくる4区分とは別のもので、両者がどう対応するのかは書かれていません。教育施設が何施設あるかも、都道府県別の分布も資料から分かりません。
指導医になるには医籍登録後12年以上、専門医の取得後5年以上の診療経験が必要です。あわせて、神経内科専門医を育てられる診療能力と学識について学会の審査を受けます。専攻医の受け入れは指導医1名あたり最大3名程度です。指導医数は載っていません。
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出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
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まとめ|神経内科専門医を目指すなら先に決めること
- 年数:受験時に卒業後6年以上の臨床研修歴が必要で、最短では卒業後6年を終えるころに条件が揃います。ただし試験時期と認定時期が資料にないため、何年目に名乗れるかまでは確定できません
- 内科の資格と学会活動:申請には日本内科学会の認定内科医(内科専門医)、正会員歴3年以上、研修カリキュラムの80%以上を満たした研修終了証明書が要ります。資料はどちらの内科資格でよいかを書き分けていません
- どこで積むか:最も短いのは、教育施設で3年を積む形と、教育施設2年以上を含めて合計3年を積む形です。教育施設が2年未満なら合計4年以上、研修歴の3番目は文字どおり読むと6年以上です
- 試験と合格率:一次が多肢選択式200問、二次が神経学的診察法の実技試験と、自験症例要約にもとづく口頭試問です。直近3年度の合格率は80.9%、81.0%、82.9%で、3年を通すと81.6%です
- 維持:5年ごとの更新で50単位、うち30単位は日本神経学会が主催する行事で取ります。満たせないときは、願い出れば保留1年、そのあと資格停止最長3年と進み、3年を超えると資格を失います。広告ができるのは保留の間までです
- 領域の規模:専門医は6,868人です。資料が総数として載せる研修施設は801ですが、これは受験資格の4区分とは別の数え方です
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
参考文献
- 日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」. https://jmsb.or.jp/wp-content/uploads/2026/03/gaiho_2025.pdf
- 日本神経学会. https://www.neurology-jp.org/

太田 旭
株式会社eggside 代表取締役。医学生。
自由診療のための医師向けメディア「doctorside」を運営したり、クリニック集患支援を行っている。