【2026年版】心臓血管外科専門医の取得に何年かかる?更新・維持の条件も解説

本記事では、医学部に在籍する筆者が、外科から心臓血管外科へ進もうと考えている専攻医と研修医のために、心臓血管外科専門医の取得までの年数と、取得後の更新・維持の条件を整理します。

以下の数値は、断りのない限り、日本専門医機構がまとめた「日本専門医制度概報 令和7年度版」によります。日本専門医機構は、各領域の専門医制度や人数をまとめた資料を公表している一般社団法人です。この資料が取得までの下限として示すのは卒後修練期間7年以上で、認定修練施設での3年以上の修練も必要です。卒後修練期間の起点は資料に定義がないため、本記事は医学部の卒業から数えています。

心臓血管外科は、外科を入口とする二段階目のサブスペシャルティ領域です。専門医を認定しているのは単独の学会ではなく、日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会、日本血管外科学会の3学会でつくる三学会構成心臓血管外科専門医認定機構(資料の略称では心血機構)です。

心臓血管外科専門医で押さえておくべき点は、次の3つです。

  • 取得までの年数:資料が示す下限は卒後修練期間7年以上です。資料に定義がないので、本記事は医学部の卒業から数えています。認定修練施設での修練も3年以上要ります。認定修練施設とは、この修練を積める施設として心血機構が認めた施設です
  • 手術の要件は例数と点数の両方:術者50例以上と第1助手50例以上が要り、術者の50例では同一術式が10例を超えないようにします。第1助手の点数を術者の2分の1、第2助手を10分の1として合算し、総点数500点以上にします。1例が何点かは資料に載っていません
  • 更新は5年ごと:資料は条件を9項目挙げていて、9項目めは手続きの定めなので、本人が満たすのは残る8項目すべてです。5年間の手術経験、論文3編以上、学術集会5回以上が並びます

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執筆者プロフィール

太田 旭

株式会社eggside 代表取締役。医学生。自由診療のための医師向けメディア「doctorside」を運営しつつ、LP制作、Google広告運用、SNS運用代行など、クリニック・歯科医院を中心としたマーケティング支援に従事しています。

心臓血管外科専門医の申請資格と取得までの年数

資料が挙げる申請資格は9項目です。

  • 日本国の医師免許証を持っていること
  • 外科専門医または外科専門医筆記試験の合格者であること。ただし認定の時点では外科専門医であることが必要
  • 卒後修練期間が7年以上あること
  • 認定修練施設において3年以上の修練期間があること
  • 修練期間中に、別に定める手術経験があること
  • 心臓血管外科学に関する別に定める業績と研修実績があること。資料は業績を学会発表と論文発表、研修実績を学会参加とセミナー受講としていますが、本数と回数は書いていません
  • 日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会、日本血管外科学会のうち少なくとも2学会の会員であり、3年以上の会員歴があること
  • 主たる認定修練施設の指導責任者から、申請書の評価を含めた推薦状をもらうこと
  • 新規申請者は、少なくとも直近3年間は修練医登録を行っていること

「修練医登録」がどこへの何の登録か、複数の施設で修練した場合にどこが「主たる」認定修練施設になるか、「指導責任者」が誰かは、資料に説明がありません。資料は9項目とは別に、心血機構または構成3学会が行う医療安全講習会を新規は2回以上受講する義務があるとも記しています。9項目のどれにも含まれないので、別に満たす条件です。

9項目のうち年数を定めているのは4つで、卒後修練期間7年以上、認定修練施設での修練期間3年以上、2学会以上での会員歴3年以上、直近3年間の修練医登録です。いちばん長い7年が下限を決めます。「卒後修練期間」として何が数えられるかは資料に説明がありませんが、医学部の卒業後の修練と読めば、初期研修の2年も認定修練施設での3年もこの7年に入ります。資料によると心臓血管外科は連動研修の対象で、連動研修とは基本領域の専門研修とサブスペシャルティ領域の研修を重ねて進める方式です。重ねられるので、初期研修2年、外科の専門研修3年、認定修練施設での修練3年を順番に積んで8年にする必要はありません。初期研修の2年のあとに3年を積めば、修練3年と会員歴3年と修練医登録の条件は卒後5年でそろい、いちばん遅く来る卒後7年が下限になります。この2年の差に何が求められるのかは、資料に書かれていません。

認定の時点では外科専門医も必要です。資料によると外科専門医は、初期研修のあとに外科領域の専門研修を通算3年以上受ければ受験できるので、卒業から5年で受験に届き、卒後7年の下限より2年早く来ます。申請資格の2つめの「外科専門医筆記試験」は、この試験を指すと読めます。

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出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」

手術経験は例数と点数の両方で数える

申請資格の5つめにある「別に定める手術経験」について、資料が載せる条件は次の4つです。

  • 術者として50例以上の手術を行う。その内訳において、同一術式は10例を超えない
  • 第1助手として50例以上を行う。第1助手の点数は術者の2分の1とする
  • 第2助手の点数は術者の10分の1とする
  • 総点数を500点以上とする

術者、第1助手、第2助手は、1件の手術での役割の別です。資料のこの箇所に定義はありませんが、外科専門医の項では術者を「手術名に示された手術の主要な部分を実際に行った者」、助手を「手術の大部分に参加した者」としています。心臓血管外科でも同じ定義を使うのか、第1助手と第2助手をどう分けるのかは書かれていません。

換算とは、役割ごとに決められた係数をかけて点数に直すことです。ただし、術者の1例が何点になるのか、点数が術式によって変わるのかは資料に載っていません。もとになる表を手元に置かない限り、総点数500点までの距離は計算できません。

同一術式は10例を超えないので、術者50例を埋めるには最低でも5種類の術式が必要です(50÷10=5)。同じ術式を11例以上行った場合に総点数へ加わるかどうかは、資料に書かれていません。

出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」

認定試験の中身は100問の多肢選択式

資料は申請資格とは別に試験の内容を載せていますが、申請と試験のどちらが先かは書かれていません。

  • 形式:Multiple choice方式、つまり多肢選択式
  • 問題数:100問
  • 内訳:必修問題30問と、110問の選択問題から選ぶ70問。合わせて100問
  • 出題範囲:偏りがないように作問される。呼吸器外科の問題も、呼吸器外科専門医合同委員会から提供されて出題される

呼吸器外科専門医合同委員会がどの組織か、その問題が必修30問と選択110問のどちらに何問入るのかは、資料に載っていません。申し込みの時期、日程、合格ライン、年間の実施回数、再受験の扱いも載っていません。

出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」

認定試験の合格率は89.0%から94.2%

資料が載せる直近3年度の実績は次のとおりです。

  • 令和4年度(2022年度):受験者155人、合格者143人、合格率92.3%
  • 令和5年度(2023年度):受験者127人、合格者113人、合格率89.0%
  • 令和6年度(2024年度):受験者154人、合格者145人、合格率94.2%

合格率は89.0%から94.2%の範囲にあり、受験者数は127人から155人の間で動いています。合格率がこの水準になる理由も、不合格になった人がその後どうするのかも、資料には載っていません。

出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」

心臓血管外科専門医の更新・維持の条件(5年ごと)

心臓血管外科専門医は5年ごとの更新制です。資料は「次のすべての資格を具えていなければならない」として9項目を挙げていますが、9項目めは「更新申請資格については心血機構総会で最終判断する」という手続きの定めです。本人が満たす条件は、残る8項目になります。

  • 申請時において、外科専門医および心臓血管外科専門医であること
  • 申請時において引き続き5年間、3学会のうち少なくとも2学会の会員であること
  • 更新申請前の5年間に、3学会の学術集会に5回以上参加し、さらに外科専門医を認定する日本外科学会の定期学術集会に1回以上参加していること
  • 5年間に、心血機構が認める医療安全講習会などを2回以上受講していること
  • 5年間に術者または指導的助手として、別に定める手術術式難易度表に挙げられている手術経験を100例換算以上持つこと。指導的助手は、術者を指導しながら助手に入る立場と読めますが、資料に定義はありません
  • 5年間に心臓血管外科に関する論文を3編以上発表していること。筆頭者と共著者を問わない。掲載先は資料の表記のまま「査読制度のある全国誌以上、総説、または図書の著書および分担執筆」とされている
  • 5年間に3学会のいずれかが主催するセミナーに3回以上参加していること
  • 心血機構が認める指導医講習会を1回以上受講していること

回数や本数を定めた条件を別々に数えるのか、1回の参加を複数の条件に充てられるのか、医療安全講習会と指導医講習会が誰を対象にしたものかは、資料に書かれていません。医療安全講習会は取得のときにも2回以上が要りますが、資料は更新の2回を「資格取得後5年間に2回以上」と書いているので、取得のときの2回とは別に数えます。

更新の「100例換算」は、点ではなく例に直す数え方です。その換算率も、もとになる手術術式難易度表の中身も、取得時の係数を更新でも使うのかどうかも、資料に載っていません。

8項目の1つめは、更新の時点でも外科専門医であることを求めています。資料の外科専門医の項は、消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、小児外科の4つの専門医資格について、取得済みならその有効期限まで外科専門医の有効期限も延長して同時に更新できると記しています。外科専門医の更新条件も別に満たす必要があるかは書かれていません。

出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」

専門医数2,619人、認定修練施設566施設と指導者の要件

心臓血管外科専門医は、資料の領域ページによると令和7年(2025年)9月現在で2,619人です。巻頭の一覧表では2,578名となっていて、ずれる理由も一覧表の基準時点も資料にないため、本記事は基準時点が示されている2,619人を使います。

認定修練施設は566施設です。この数の基準時点と、都道府県別の分布、施設名の一覧をどこで見られるかは載っていません。

認定修練施設には、修練指導者が1名以上常勤している必要があります。修練指導者とは、その施設で修練中の医師を指導する立場の医師です。資料が挙げる要件は3つで、すべてを備えている必要があります。

  • 心臓血管外科専門医であること
  • 心臓血管外科専門医を1回以上更新した者、または日本心臓血管外科学会の国際会員であること
  • 査読制度のある全国誌以上に、心臓血管外科に関する筆頭論文、つまり自分が筆頭著者の論文を5編以上持ち、かつ術者として難易度B以上の心臓血管外科手術を100例以上経験し、そのうち30例以上が難易度Cであること

難易度Bと難易度Cが何を指すか、日本心臓血管外科学会の国際会員が誰を指すかは、資料に載っていません。資料によると、心血機構は規則と申請の案内をホームページ(http://cvs.umin.jp/)に随時掲載しています。

出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」

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まとめ|心臓血管外科専門医を目指すなら先に確かめること

  • 申請資格と取得までの年数:9項目と、9項目には入っていない医療安全講習会2回以上を満たします。下限は卒後修練期間7年以上ですが、起点は資料になく、本記事は卒業から数えています
  • 手術経験の数え方:術者50例以上で同一術式は10例まで、第1助手50例以上、総点数500点以上です。術者1例が何点かは資料にないので、点数の決まり方を先に確かめてください
  • 認定試験の中身:100問の多肢選択式で、必修30問と、110問から選ぶ選択70問です。呼吸器外科の問題も出ます
  • 認定試験の合格率:令和4年度から令和6年度で89.0%から94.2%です
  • 更新・維持の条件:5年ごとに8項目をすべて満たします。手術100例換算、論文3編、学術集会やセミナー、講習会への参加が並びます
  • 専門医数と研修環境:令和7年9月現在で2,619人(巻頭の一覧表では2,578名)、認定修練施設は566施設です。認定修練施設には、3要件をすべて備えた修練指導者が1名以上常勤している必要があります

出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」

参考文献

  • 日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」. https://jmsb.or.jp/wp-content/uploads/2026/03/gaiho_2025.pdf
  • 三学会構成心臓血管外科専門医認定機構. http://cvs.umin.jp/
この記事の監修者

太田 旭

株式会社eggside 代表取締役。医学生。
自由診療のための医師向けメディア「doctorside」を運営したり、クリニック集患支援を行っている。