本記事では、医学部に在籍する筆者が、小児循環器を専門にしようと考えている専攻医と研修医のために、小児循環器専門医の取得までの年数と、取得後の更新・維持の条件について、日本専門医機構の一次資料を読み解き、整理しています。
以下の数値は、断りのない限り、日本専門医機構がまとめた「日本専門医制度概報 令和7年度版」によります。小児循環器専門医は、日本小児循環器学会が担当する資格です。この資料は、小児循環器専門医の研修年数を書いていません。年数として読み取れるのは入口にあたる小児科専門医までで、最短では医学部を卒業してから5年を終えるころに、その研修歴の条件がそろいます。小児循環器の専攻医登録、つまり研修を始めるにあたって行う登録は、この時点から可能です。そこから専門医試験を受けるまでに何年の研修が要るのかも書かれていないため、卒業から何年目に小児循環器専門医を名乗れるかは、資料だけでは確定できません。
小児循環器専門医で押さえておくべき点は、次の3つです。
- 研修年数が資料にない:研修の年数や症例数が入る「臨床関係事項」の欄が、この領域では「特記すべきことなし」の一行だけです。年数として確認できるのは、入口の小児科専門医に必要な卒後5年以上(初期研修2年を含む)までです
- 登録と受験で条件が違う:小児科の専門研修が修了していれば、小児科専門医試験を受ける前でも小児循環器の専攻医登録ができます。一方、小児循環器専門医試験を受けるには、小児科専門医の資格に加えて、研修カリキュラムの修了と研修管理委員会の判定が要ります
- 試験は補正してから判定する:筆記試験100問について、補正調整を行ったうえで、正答率60%以上を目安として合格とします。面接試験も併せて行われます
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小児循環器専門医の取得までに何年かかるか
資料は領域ごとに、専門医申請資格、試験内容、臨床関係事項、研修施設、指導体制、更新関係事項などの欄を設けています。このうち研修の年数や症例数が書かれるのが「臨床関係事項」の欄で、小児循環器専門医のこの欄は「特記すべきことなし」の一行だけです。
受験には小児科専門医の資格が要るので、入口にあたる小児科専門医の側から見ます。資料の小児科専門医のページには、研修歴が「5年以上(卒後2年の「初期臨床研修」の期間を含む)」と書かれています。起点は卒業で、初期研修の2年はこの5年の内側に入ります。残る3年が初期研修のあとに積む小児科の専門研修にあたり、卒業してすぐに初期研修へ進んだ人であれば、卒業後5年を終えるころにこの条件がそろいます。
小児循環器の研修は、小児科専門医の資格が出るのを待たずに始められます。資料は「小児科専門研修が修了していれば、小児科専門医試験を受験する前に小児循環器の専攻医登録が可能である」と書き、続けて「小児循環器専門研修は、小児科専門医資格の取得がないと専門医試験の受験資格を得ることはできない」とも書いています。登録できることと受験できることは別だ、ということです。専攻医登録から受験までに何年の研修が必要なのかも、試験の実施時期も、合格から認定までの期間も資料にないため、本記事で示せるのは「小児科専門医の年数条件は卒後5年でそろう」ところまでです。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
登録と受験で、それぞれ何が要るか
資料の「専門医申請資格」の欄は、専攻医登録と受験申請を分けて書いています。
- 専攻医登録:小児科の専門研修が修了していること。小児科専門医試験を受験する前でも登録できます
- 受験申請:小児科専門医の資格を取得していること。あわせて、小児循環器研修カリキュラムを修了し、研修管理委員会で研修修了の判定を受けていること
ここでいう研修管理委員会とは、研修統括責任者と各施設の研修指導責任者が集まる委員会だと資料は説明していて、修了の判定はこの委員会が行います。それぞれがどういう立場で、判定がいつ行われるのかは書かれていません。
登録の様式や締切、小児科専門医試験に不合格だったときの専攻医登録の扱いも載っていません。
研修の中身も見ておきます。資料によれば、小児循環器の研修カリキュラムには医療倫理、医療安全、感染対策が含まれ、関連する学術集会やセミナーなどに参加したうえで、医療安全講習、感染対策講習、医療倫理講習を受ける必要があります。回数は書かれていません。カリキュラム本体についても、資料は「別紙の研修カリキュラム」と書くだけで、項目の数も、経験すべき疾患や症例数も載せていません。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
試験は多肢選択式100問と面接
資料が試験について書いているのは、筆記試験と面接試験の2つです。
筆記試験は多肢選択式で、問題数は100問です。資料によれば、重篤な臓器不全の病態に対する臨床的判断能力と問題解決能力、病態を考慮した適切な治療のための知識と技能が問われます。
合格の決め方には特徴があります。資料は「筆記試験は難易度調整(正答率、識別指数による補正調整)の上、正答率60%以上を目安として合格とする」と記しています。素点をそのまま60%で切るのではなく、補正してから判定します。識別指数が何を指すのか、補正をどう計算するのかは書かれていません。「目安」という語が付いているため、60%が固定された合格ラインなのかどうかも読み取れません。
面接試験は筆記試験と併せて実施され、理解やコミュニケーション能力が評価されます。配点や、筆記と面接のどちらか一方だけで不合格になることがあるのかは資料に載っていません。
費用は受験料30,000円と認定料30,000円です。支払いの時期、試験の実施時期と回数、再受験の扱いは載っていません。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
専門医試験の合格率は77.4%から83.3%のあいだで動いている
専門医試験の結果は、直近3年度分が資料に載っています。
- 令和4年度(2022年度):受験者42人、合格者33人、合格率78.6%
- 令和5年度(2023年度):受験者30人、合格者25人、合格率83.3%
- 令和6年度(2024年度):受験者31人、合格者24人、合格率77.4%
不合格は令和4年度が9人、令和5年度が5人、令和6年度が7人です。3年を合わせると受験者103人に対して合格者82人で、通した合格率は79.6%です。
母数は小さく、令和6年度の受験者31人では、合格者が24人から25人に1人増えるだけで合格率は77.4%から80.6%へ3.2ポイント動きます。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
取ったあと何をすれば維持できるか
資料の「更新関係事項」の欄に書かれているのは、次の3つです。
- 「毎年4月1日付け更新、新専門医証を発行」と記されています
- 更新料は30,000円です
- 小児循環器の健診業務は、1回(半日程度)につき診療実績1症例分とみなされます
3つめは更新で数える診療実績の数え方です。健診業務が何を指すのかは説明がなく、更新に診療実績を何症例出せばよいのかも書かれていません。
1つめの「毎年4月1日付け更新」が更新の周期を指すのか、更新の効力が生じる日付を指すのかは読み取れません。資料は何年ごとに更新するのかを書いておらず、単位のような要件があるのかどうかも記していません。
更新は、指導する側に回るときにも関わります。資料の「指導体制」の欄によれば、小児循環器専門研修指導医とは、小児循環器専門医の資格を持ち、1度以上更新した者です。専門医を取っただけでは指導医にならず、少なくとも1回の更新を経る必要があります。資料は「小児循環器指導医」という書き方もしていますが、この2つが同じものかは書かれていません。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
専門医は704名、研修施設は143
小児循環器専門医は704名です。資料の一覧表は専門医数を、学会が認定した学会認定専門医と日本専門医機構が認定した機構認定専門医の2列で数えていて、704名は学会認定専門医数の欄に入っています。機構認定専門医数の欄は「――」で、この記号が0名を指すのか、集計していないことを指すのかは書かれていません。いつ時点の数かも記されていません。資料はこの領域の制度名を「日本専門医機構認定小児循環器専門医」と記していますが、704名は学会認定の欄の数です。
日本小児循環器学会の会員数は2025年10月29日現在で2,708名ですが、資料が示す内訳の医師2,408名と医師以外230名を足すと2,638名で、掲載の合計と70名ずれます。差の理由は書かれていません。
研修施設は、同じ2025年10月29日現在で143施設です。資料は施設を、専攻医の研修を引き受ける基幹施設と、基幹施設と組む連携施設に分けて書いています。143がどちらを含めた数なのかも、都道府県別の分布も書かれていません。
施設の条件は、単独で研修を引き受ける基幹施設について書かれています。資料が挙げているのは次の9つです。
- 学会が認定した小児循環器指導医が、常勤医として1名以上勤務し、専攻医を指導できること
- 心エコー検査(経胸壁および経食道)、CTまたはMRI、運動負荷心電図、ホルター心電図、心臓カテーテル検査の各設備があり、小児循環器関連の疾患を検査し診断できること
- 申請前年(1月から12月)の小児循環器関連の入院患者が100例以上あること。心血管病変を合併する川崎病を含み、1入院を1症例と数えます
- 同じ期間の小児循環器関連の心臓カテーテル検査に、カテーテルインターベンションを加えた施行数が50例以上あること
- 研修カリキュラムに基づく研修が可能で、専攻医の研修を定常的に行える症例数があること
- 小児循環器に関連する学術集会への発表が毎年1題以上あること。認定時は過去3年間の実績を提出します
- 小児循環器に関連する学会発表と論文発表の機会を与え、指導ができること
- 施設内に研修管理委員会を設置し、専攻医と専門研修計画の管理、および計画の継続的な改良ができること
- 地域連携研修枠の専攻医から希望の依頼があった場合に、担当指導医を決めてフォローアップを行うこと。地域連携研修枠が何を指すのかは資料に書かれていません
これは連携施設を持たない単独の基幹施設の要件です。資料によれば、1つの基幹施設と1つ以上の連携施設で研修施設群を組むこともでき、その条件は整備基準に記載されているとありますが、中身は資料に載っていません。整備基準とは、領域ごとに研修内容や施設の要件を定めた文書です。
資料の指導体制の欄によれば、施設群を組んだ場合は、小児循環器専門医が各研修施設に常勤医として1名以上勤務し、施設群の中に小児循環器指導医が常勤医として1名以上いることが必要です。単独の基幹施設では、指導医が常勤医として1名以上勤務します。
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出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
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まとめ|小児循環器専門医を目指すなら先に決めること
- 年数:資料にあるのは、入口の小児科専門医に必要な卒後5年以上(初期研修2年を含む)までです。小児循環器の研修年数は書かれていないため、卒業から何年目に名乗れるかは確定できません
- 登録の時期:小児科の専門研修が修了していれば、小児科専門医試験の前でも専攻医登録ができます。受験には小児科専門医の資格と、研修カリキュラムの修了、研修管理委員会の判定が要ります
- 試験:多肢選択式100問と面接試験です。筆記は補正調整のうえ正答率60%以上が目安で、受験料と認定料はそれぞれ30,000円です
- 合格率:直近3年度は78.6%、83.3%、77.4%で、3年を通すと79.6%です。令和6年度は受験者31人で、合格者が1人増えるだけで3.2ポイント動きます
- 維持:資料にあるのは、毎年4月1日付けの更新、更新料30,000円、健診業務を半日につき診療実績1症例分と数えることの3つです。更新の周期は載っておらず、単位のような要件があるのかどうかも書かれていません
- 領域の規模:専門医は704名で、集計時点は資料にありません。研修施設は143で、基幹施設には心臓カテーテル検査の設備と年間の症例数まで条件が付いています
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
参考文献
- 日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」. https://jmsb.or.jp/wp-content/uploads/2026/03/gaiho_2025.pdf
- 日本小児循環器学会. https://jspccs.jp/

太田 旭
株式会社eggside 代表取締役。医学生。
自由診療のための医師向けメディア「doctorside」を運営したり、クリニック集患支援を行っている。