本記事では、医学部に在籍する筆者が、整形外科または脳神経外科のあとに脊椎脊髄外科を専門にしようと考えている専攻医と研修医のために、脊椎脊髄外科専門医の取得までの年数と、取得後の更新・維持の条件について、日本専門医機構と厚生労働省の一次資料を読み解き、整理しています。
以下の数値は、断りのない限り、日本専門医機構がまとめた「日本専門医制度概報 令和7年度版」によります。脊椎脊髄外科専門医は、日本専門医機構が認定した整形外科専門医と脳神経外科専門医のどちらからでも申請できます。入口の専門医は卒業から6年で年数の条件が揃い、脊椎脊髄外科の通常研修として2年以上が必要です。この2年を入口の専門研修と重ねられるかは資料にないため、重ねられなければ卒業から8年が下限です。資料の基幹学会名の欄には、日本脊椎脊髄病学会と日本脊髄外科学会が並び、前者は整形外科、後者は脳神経外科を背景にする学会とされています。
脊椎脊髄外科専門医で押さえておくべき点は、次の3つです。
- 入口が2つある:整形外科専門医と脳神経外科専門医のどちらからでも申請できます。資料は入口の資格を「日本専門医機構認定整形外科専門医あるいは同脳神経外科専門医」と書いています
- 手術が術式まで指定されている:執刀医または第一助手として100例、うち執刀医として60例以上が必要で、その60例には腰椎と頚椎の4つの術式が10例、20例、10例、20例と割り当てられています
- 合格率が3年とも99%前後:直近3年度は98.9%、99.0%、99.1%です。脊椎脊髄外科専門医検討委員会に申請資格を有すると判定された人だけが筆記試験に進みます
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脊椎脊髄外科専門医の申請資格と取得までの年数
資料の専門医申請資格の欄は、条件を次の7項目に分けています。
- 機構が認定した整形外科専門医あるいは脳神経外科専門医であること
- 日本脊椎脊髄病学会あるいは日本脊髄外科学会に入会してから4年以上経過していることが望ましいこと
- カリキュラム研修期間は通常研修として2年以上とし、専門研修施設Aで6か月以上、または専門研修施設Bで通算2年以上の研修実績を持つこと
- 専門研修期間中に執刀医あるいは第一助手として経験した手術症例が100症例あること
- JSSRあるいはNSJの年次学術集会への出席が2回以上あること
- 脊椎脊髄に関連した業績が2編以上あること。年次学術集会での発表、講演、論文、著書などが対象です
- 専門研修指導医からの推薦があること
年数は3番目にあります。通常研修とカリキュラム研修期間が何を指すのかは資料に説明がありません。1番目では、機構が認定した専門医であることが条件になっており、学会が認定した整形外科専門医や脳神経外科専門医で足りるとは書かれていません。2番目の会員歴は「望ましい」という書き方で、満たさなければ申請できないとは記されていません。5番目のJSSRとNSJは、基幹学会名の欄に並ぶ日本脊椎脊髄病学会と日本脊髄外科学会の略称と読めますが、資料に対応の明示はありません。
入口になる2つの基本領域の側では、資料の整形外科専門医のページが、6年以上の研修期間を申請資格に挙げ、臨床研修の期間を含めてもよいとしています。あわせて、学会が認定した研修施設での研修3年以上を含む4年以上の整形外科専門研修の修了も条件です。脳神経外科専門医のページは、卒後臨床研修2年のあと、学会認定の専門研修プログラムで通算4年以上の研修を経ることを求めています。そのため、どちらも卒業から6年で年数の条件が揃います。この6年は本記事の計算です。
脊椎脊髄外科の2年をこの6年に重ねられるかは、資料にも厚生労働省の一覧にも書かれていません。一覧は脊椎脊髄外科を補完研修領域に分類していますが、補完研修が何を指すのかはどちらの資料にも説明がありません。重ねられない場合は卒業から8年が下限です。試験の実施時期、申請の締切、合格から認定までの期間も資料にないため、卒業から何年目に名乗れるかまでは確定できません。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」、厚生労働省 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会「サブスペシャルティ認定領域一覧」2025年12月19日現在
手術で何を執刀するのか
申請資格では、専門研修期間内に執刀医あるいは第一助手として経験した100症例について、手術内容の詳細などを示す資料の提出が必要です。この専門研修期間がいつ始まるのかは書かれていません。100例のうち執刀医としての症例は60例以上で、残る40例分は第一助手でもよいと読めます。
執刀医としての60例には、次の手術が含まれていなければなりません。
- 腰椎椎間板ヘルニアに対する後方摘出術:10例。内視鏡、顕微鏡、肉眼的のいずれでもよいと資料は書いています
- 腰部脊柱管狭窄症に対する後方除圧術:20例
- 頚椎前方除圧固定術:10例
- 頚椎後方除圧術:20例
指定された4術式で60例になるため、総数だけを満たしても内訳が欠けていれば申請できません。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
試験はどう行われるか
資料の「試験内容」の欄によると、脊椎脊髄外科専門医検討委員会が申請資格を有すると判定した人に対して筆記試験を行い、最終的な合否判定も同じ委員会が行います。試験問題の作成と実施は専門医試験委員会が担当しますが、この2つの委員会の関係に説明はありません。
試験について資料が書いているのは、次の点です。
- 形式:マークシート形式の5択問題です
- 出題:脊椎脊髄外科専門医問題集から中心に出題されます
- 通知:受験者には合否の最終結果のみが通知されます
問題数、試験時間、合格の基準はいずれも資料に載っていません。問題集の入手先、受験料、再受験の扱いも書かれていません。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
どれくらいの人が合格しているか
資料には直近3年度分が載っています。
- 令和4年度(2022年度):受験者184人、合格者182人、合格率98.9%
- 令和5年度(2023年度):受験者205人、合格者203人、合格率99.0%
- 令和6年度(2024年度):受験者221人、合格者219人、合格率99.1%
3年を合わせると受験者610人に対して合格者604人で、通した合格率は99.0%です。合格率が高い理由は資料にありません。受験するには、執刀医としての60例と術式ごとの内訳、指導医からの推薦、学術集会への出席2回以上を満たしたうえで、検討委員会に申請資格を有すると判定される必要があります。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
取ったあと何をすれば維持できるか
資料の「更新関係事項」の欄は、更新を申請する人が満たすべき条件を次のように挙げています。
- 機構が認定した整形外科専門医あるいは脳神経外科専門医であること
- 5年間引き続いて日本脊椎脊髄病学会あるいは日本脊髄外科学会の会員であることが望ましいこと
- 専門医として認定を受けた日から更新申請時までの5年間に、執刀医あるいは第一助手としての手術症例が150例以上あること。ただし小手術は含めません
- 認定を受けた日から更新申請時までの間に、いずれかの学会の年次学術集会に3回以上の参加があること
- 脊椎脊髄に関連した業績が3編以上あること。学会発表、講演、論文、著書などが対象で、共著でもかまいません
資料は更新の周期そのものを書いていませんが、条件のうち2つは5年間で数えます。手術症例は取得時が専門研修期間中の100例、更新が5年間で150例で、数える期間が異なります。更新では単純平均で年30例のペースです。
更新の150例に小手術は含められませんが、小手術の定義は資料にありません。やむを得ない事情で申請ができない場合は申立書を提出し、いずれかの学会の理事会が正当な事由と認めたときは更新を2年間猶予できます。医療倫理と医療安全は更新の欄になく、更新時に講習の受講が必要かは資料から読み取れません。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
専門医と研修施設はどれだけあるか
脊椎脊髄外科専門医は2025年8月現在で2,378人です。この数字は資料の一覧表で学会認定専門医数の欄に入り、機構認定専門医数の欄は「――」です。この記号が0人を指すのか、集計していないことを指すのかは書かれていません。
研修施設には基準Aと基準Bの2区分があり、申請資格にあった専門研修施設AとBがこれにあたります。施設の総数、名称、都道府県別の分布は載っていません。基準Aの要件として資料が挙げているのは、次の項目です。
- 脊椎脊髄手術が3年間連続して年100例以上あること
- 専門研修指導医が常勤していること。指導医は学会の指導医とし、指導医のなかからカリキュラム責任者を選出します
- 日本整形外科学会あるいは日本脳神経外科学会が認定する研修施設であること
- 施設に所属する医師が筆頭演者として、いずれかの学会の学術集会で3年間に1回以上発表または講演していること
この4項目に該当しない場合でも、地域あるいは研修体制を考慮した特別措置として、検討委員会の議を経て認定できると資料にあります。付帯条件は、指導医のもとで治療責任を持てる環境、十分な訓練ができる研修制度と環境、年間の手術件数のバランス、専攻医の受け入れ態勢です。
基準Bは、脊椎脊髄手術が3年間の平均で年30例以上あること、専門研修指導医が1名以上常勤しているか定期的に週1回以上勤めていることの2点で、基準Aと同じく特別措置の規定も置かれています。申請に必要な研修実績は、施設Aで6か月以上、または施設Bで通算2年以上です。
資料は交叉的連携による研修を認め、脳神経外科の専門医が日本脊椎脊髄病学会の認定施設で研修すること、あるいはその逆を可能としています。
指導の体制について資料は、指導管理責任者と指導医の協力で専攻医を評価できる体制を整えると書いています。指導管理責任者、カリキュラム責任者、専門研修指導医という3つの呼び名の関係と、それぞれになる条件は載っていません。
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出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
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まとめ|脊椎脊髄外科専門医を目指すなら先に決めること
- 年数:入口の整形外科専門医と脳神経外科専門医は、どちらも卒業から6年で年数の条件がそろいます。この6年は本記事の計算です。脊椎脊髄外科の研修は資料のいう通常研修として2年以上で、これを重ねられるかが資料にないため、重ねられない場合の下限は卒業から8年です
- 入口の選択:整形外科と脳神経外科のどちらからでも申請できますが、いずれも機構が認定した専門医であることが条件です
- 研修施設の区分:施設Aなら6か月以上、施設Bなら通算2年以上の研修実績が必要です。施設Aは3年間連続で年100例以上、施設Bは3年間平均で年30例以上と、手術実績の数え方も異なります
- 手術:専門研修期間中に執刀医または第一助手として100例、うち執刀医として60例以上です。その60例は4つの術式に10例、20例、10例、20例と割り当てられます
- 試験と合格率:マークシート形式の5択問題で、直近3年度の合格率は98.9%、99.0%、99.1%です。試験前に申請資格の判定があります
- 維持:更新には、5年間で執刀医または第一助手として150例以上の手術が必要で、これに加えて学術集会への3回以上の参加と業績3編以上が要ります。小手術は150例に含められません
- 領域の規模:専門医は2,378人で、これは学会が認定した数です
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
参考文献
- 日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」. https://jmsb.or.jp/wp-content/uploads/2026/03/gaiho_2025.pdf
- 厚生労働省 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会「サブスペシャルティ認定領域一覧」2025年12月19日現在. https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/001675411.pdf
- 日本脊椎脊髄病学会. http://www.jssr.gr.jp/
- 日本脊髄外科学会. https://www.nsj-official.jp/

太田 旭
株式会社eggside 代表取締役。医学生。
自由診療のための医師向けメディア「doctorside」を運営したり、クリニック集患支援を行っている。