本記事では、医学部に在籍する筆者が、消化器を専門にしようと考えている研修医のために、消化器病専門医の取得までの年数と、取得後の更新・維持の条件を整理します。
以下の数値は、断りのない限り、日本専門医機構がまとめた「日本専門医制度概報 令和7年度版」によります。年数条件は、基本領域の専門研修の開始から4年以上と、認定された施設での3年以上の消化器病専門医研修です。内科専門医を前提にすると、初期研修2年を含めて早くて卒後6年を終えるころに条件がそろいます。ただし、試験日と認定日は資料に載っていないため、資格を取得できる時期までは分かりません。
消化器病専門医制度を担当するのは日本消化器病学会です。資料の沿革では、日本専門医機構の「消化器内科」は消化器病、消化器内視鏡、肝臓を集約した領域とされていますが、専門医一覧はこの3資格を別々に載せています。
消化器病専門医で押さえておくべき点は、次の3つです。
- 年数条件:基本領域の専門研修の開始から4年以上と、認定された施設での3年以上の消化器病専門医研修が要ります。内科専門医を前提にすると、初期研修2年を含めて早くて卒後6年を終えるころに年数条件が揃います。ただし試験日と認定日は資料になく、資格が手に入る時期までは分かりません
- 研修実績:資料が「主治医(主担当医)」と表記する立場で、58疾患以上、120症例以上を経験します。外来症例は登録症例の20%までです
- 更新条件:5年ごとに、学会が認定する50単位以上を取得します。単位とは、更新要件として学会が認定する点数です。所定の資格を持ち、学会の総会と、日本消化器関連学会機構(以下、JDDW)が開催する学術集会にそれぞれ1回以上、総会ポストグラデュエイトコースにも出席します
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消化器病専門医の取得までの流れ
初期臨床研修を2年終えたあと、内科や外科などの基本領域の専門研修に入り、その途中または修了後に消化器病専門医研修を3年以上積み、認定試験に合格します。研修を始められる時期は、申請時に認められる前提資格によって異なります。前提資格は内科専門医、外科専門医、放射線診断専門医、放射線治療専門医の4資格で、前の2つが基本領域、後の2つがサブスペシャルティ領域の資格です。
- 内科系:基本領域の専門研修の2年目以降から、消化器病専門医研修を始められる
- 外科系:基本領域の専門研修を修了してから、消化器病専門医研修に入る
- 放射線科:放射線診断専門医または放射線治療専門医を取るために必要な専門研修を修了してから入る
内科系だけが基本領域の研修の途中から入れる書き方ですが、資料は消化器病専門医の欄で、基本領域の専門研修とサブスペシャルティ領域の研修を重ねて進める連動研修という語を使っていません。研修は認定施設、関連施設、特別関連施設で通算3年以上を積み、特別関連施設は1年間までです。
受験の年数条件である「基本領域の専門研修の開始から4年以上」に、初期研修の2年は含まれません。内科系はこの4年の内側に消化器病研修の3年を収められます。冒頭で触れた卒後6年は、初期研修の2年にこの4年以上を足した数です。内科の専門研修そのものが何年かかるかは、資料の消化器病のページに載っていません。資料は申請資格の欄に「臨床系大学院に在学中の臨床研修は、研修実績として認めること」という項目を置いていますが、その範囲は書かれていません。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
研修で求められる58疾患・120症例
3年以上の研修では、資料が「主治医(主担当医)」と表記する立場で、次の症例を経験します。
- 疾患数:研修カリキュラムの全107疾患のうち、症例経験の到達目標が2または3に該当する疾患を中心に、58疾患以上を経験する。この区分が何を指すかも、該当する疾患が107のうち何疾患あるかも資料にない
- 症例数:120症例以上。3年以上の研修期間を通算して数える。疾患ごとに何症例必要かは資料に載っていない
- 偏りの制限:消化管疾患、肝疾患、胆膵疾患、腹腔・腹壁疾患の4群を、資料の表現では「偏りのないように」経験する。判定基準や各群の最低症例数は資料に載っていない
- 外来症例の上限:登録する症例のうち外来症例は20%までとする。ちょうど120症例を登録する場合なら24症例にあたる
基本領域の内科・外科研修中の症例は、自動的に算入されるわけではありません。主担当医として適切な医療を行い、専攻医のレベルと同等以上の考察を行っていると指導医が確認・承認した場合に、消化器病専門医研修カリキュラム評価表と日本消化器病学会専攻医登録評価システムで登録できます。判定方法はこれ以上載っていません。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
受験資格と認定試験
症例を積んだうえで、受験には学会活動の実績も要ります。
- 会員歴:4年以上、日本消化器病学会の会員を継続し、申請年度までの会費を納めている。研修期間は3年以上だが会員歴は4年以上必要で、その起算方法は資料に載っていない
- 学術集会への出席:直近5年以内に、学会の総会と、JDDWが開催する学術集会に、それぞれ1回以上出席する
- ポストグラデュエイトコース:学会主催の総会ポストグラデュエイトコースに1回以上出席する。半日単位のコースの場合は2回以上。総会への出席とは別に数える。資料はこのコースの内容を説明していないが、別の欄では、学会の教育講演会や専門医セミナー、JDDWの教育講演と並べて、消化器領域の救急対応、医療安全や感染対策、医療倫理などを学ぶ場として挙げている
- 発表実績:消化器に関する学会発表または論文発表が、筆頭著者もしくは共著者として3件以上ある
- 申請時の資格:内科専門医、外科専門医、放射線診断専門医、放射線治療専門医のいずれかを持っている
試験を受けるための研修条件は、基本領域の臨床研修の修了と開始後4年以上の経過、認定施設・関連施設・特別関連施設での3年以上の消化器病専門医研修の修了です。これをすべて満たす代わりに、2023年以降の医師免許取得者が消化器外科専門医または日本消化器外科学会認定登録医のいずれかを持つ経路が記載されています。この代替は研修条件に対するもので、会員歴や学会活動などほかの申請条件を置き換えるとは記されていません。2資格の取得条件や違いも資料にはありません。
試験の解答形式は、資料の表記でCBT方式のMCQ、全100問です。資料はCBTとMCQが何の略かを書いていません。本記事ではCBTを画面上で解答する方式、MCQを選択肢から答えを選ぶ形式と読んでいます。試験時間、出題分野の区分、合格基準、実施回数、受験料は資料になく、書類審査についても原文は「研修実績期間業績の有無」とだけ記しています。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
認定試験の合格率は年度で振れている
- 令和4年度(2022年度):受験者859人、合格者747人、合格率87.0%
- 令和5年度(2023年度):受験者837人、合格者612人、合格率73.1%
- 令和6年度(2024年度):受験者891人、合格者813人、合格率91.2%
令和5年度の73.1%は令和4年度より13.9ポイント、令和6年度より18.1ポイント低い値ですが、理由は資料にありません。「令和2年度、令和3年度は実施延期、令和4年度に令和2年・3年を実施」という注記はありますが、令和4年度の受験者859人との対応は書かれていません。3年度を合わせると受験者2,587人、合格者2,172人、合格率84.0%で、不合格は415人です。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
消化器病専門医の更新・維持の条件(5年ごと・50単位)
消化器病専門医は5年ごとに更新し、次のすべてを満たす必要があります。
- 単位:学会が認定する50単位以上を取得する。何をすると何単位になるかという配点は資料に載っておらず、取得期間についても「取得期間内に」と記すだけである
- 資格の保持:消化器病専門医とは別に、内科専門医、認定内科医、総合内科専門医、外科専門医、外科認定登録医、放射線診断専門医、放射線治療専門医、小児科専門医の8資格のうち、いずれかを更新時に持っている
- 学術集会への出席:学会の総会と、JDDWが開催する学術集会に、それぞれ1回以上出席する
- ポストグラデュエイトコース:学会主催の総会ポストグラデュエイトコースに1回以上出席する。半日単位の場合は2回以上
認定内科医と総合内科専門医は、資料の内科のページで、内科専門医が始まる前の制度に属する資格として扱われています。外科認定登録医を認定する学会名は資料の消化器病専門医の欄になく、受験の代替経路に出てくる日本消化器外科学会認定登録医とは名称が異なります。申請時に必要な資格は4つ、更新時に認められるのは上の8資格ですが、この違いの理由は書かれていません。
2005年1月1日以前に消化器病専門医を取得した人は、8資格のいずれかを持つ条件の対象外です。ただし、この扱いは内科系の消化器病専門医には原則として適用されません。内科系がどの範囲を指すのかは資料に書かれていません。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
研修施設の基準と数、専門医数
研修を積む施設は、認定施設、関連施設、特別関連施設の3種類です。
認定施設には、次の5項目すべてが必要です。
- 消化器系病床を常時30床以上持つこと
- 指導医1名以上、専門医2名以上が常勤していること
- 指導医の責任の下に、十分な指導体制がとれること
- 「消化器病専門医研修カリキュラム」に基づく研修が可能であること。研修管理委員会を設置し、研修統括責任者1名を置いて、関連施設と連携して専攻医の研修の進捗を管理すること
- 剖検室を持つこと。ただし、関連する剖検施設を含むものとする
関連施設には、次の4項目すべてが必要です。
- 消化器系病床を常時20床以上持つこと
- 専門医1名以上が常勤し、その代表者が認定施設の研修管理委員会に参加していること
- 研修施設群の指導医からの十分な指導体制がとれること。ただし、原則として指導医1名に対し関連施設1ヵ所に限る
- 「消化器病専門医研修カリキュラム」に基づく研修が可能であること
例外が2つあります。3項目めの指導体制を満たさない施設は、研修統括責任者の推薦があり、専門医2名以上が常勤し、地区委員会が認めれば関連施設として認定できます。病床数または人員の条件を満たさない施設は、研修統括責任者の推薦があり地区委員会が認めれば特別関連施設として認定でき、そこでの研修は専門医研修期間中の1年以内です。「研修施設群」と「地区委員会」が何を指すのか、研修統括責任者を誰が務めるのかは、いずれも資料に書かれていません。
指導医の常勤と剖検室を求めているのは認定施設だけです。剖検室にどのような設備や剖検の実績が要るのかは資料に書かれていません。施設数は、基幹研修施設が1,075、関連施設が407、特別関連施設が52で、合計1,534施設です。資料は同じ欄で、施設基準の説明に「認定施設」、施設数の集計に「基幹研修施設」という表記を使っていますが、両者の関係は説明していません。
資料は、学会が認定した専門医数と日本専門医機構が認定した専門医数を別の列に掲載しています。消化器病専門医は令和7年(2025年)8月時点で23,721人ですが、これは学会認定の列の数字で、機構認定の列は空欄のため、機構認定の人数は分かりません。日本消化器病学会の会員数は36,924人で、内訳は医師36,853人、医師以外71人です。この会員数も令和7年8月時点です。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
指導医の評価
資料は指導体制の欄に、指導医による評価の項目、基準、時期として3点を挙げています。
- 指導医は、消化器病専門医研修カリキュラム評価表と日本消化器病学会専攻医登録評価システムを用いて、専攻医の経験症例および技術・技能の研修目標達成度を評価する。講習受講や発表実績も指導医が確認する。ここでいう講習が何を指すのかは資料に書かれていない
- 指導医は、専攻医の専門的知識・技能を年に複数回評価する。資料が挙げているのは、消化器内視鏡検査と治療(原則、内視鏡的止血レベルまで)、消化管造影検査の読影、腹部超音波検査などである
- 指導医は、専攻医の医療に対する態度・姿勢を総合的に評価する
2点目の「原則、内視鏡的止血レベルまで」は、研修で求められる内視鏡治療の範囲を示した記述です。この範囲を超える治療内視鏡の扱い、指導医の要件と人数は、いずれも資料の消化器病専門医の欄にありません。
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出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
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出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
まとめ|消化器病専門医を目指すなら先に決めること
- 年数条件:基本領域の専門研修開始後4年以上と消化器病研修3年以上が要ります。内科系だけが基本領域の研修2年目以降から重ねられ、外科系と放射線科は修了後です
- 症例条件:58疾患以上、120症例以上を経験し、外来症例は登録症例の20%までです
- 受験資格と試験:4年以上の継続会員、学術集会・ポストグラデュエイトコース・発表実績、申請時の4資格のいずれかが要ります。試験はCBT方式のMCQで全100問ですが、試験時間や合格基準は資料にありません
- 合格率:令和4年度から令和6年度は87.0%、73.1%、91.2%、3年度の合計は84.0%です。令和5年度だけ下がっている理由は資料にありません
- 更新:5年ごとに50単位以上を取得し、8資格のいずれかを持ち、総会とJDDWの学術集会、総会ポストグラデュエイトコースに出席します
- 研修施設と専門医数:認定施設は消化器系病床を常時30床以上と指導医1名・専門医2名以上の常勤、関連施設は消化器系病床を常時20床以上と専門医1名以上の常勤が基準で、関連施設に指導医の常勤は求められていません。数は合計1,534施設で、学会認定専門医は23,721人です
- 指導医:指導医は評価表と登録評価システムで達成度を評価します。指導医になるための要件は資料にありません
消化器病専門医研修を始められる時期は、入口とする基本領域によって異なります。研修先は認定施設、関連施設、特別関連施設に分かれ、特別関連施設での研修は1年までしか数えられません。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
参考文献
- 日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」. https://jmsb.or.jp/wp-content/uploads/2026/03/gaiho_2025.pdf

太田 旭
株式会社eggside 代表取締役。医学生。
自由診療のための医師向けメディア「doctorside」を運営したり、クリニック集患支援を行っている。