本記事では、医学部に在籍する筆者が、糖尿病を専門にしようと考えている専攻医と研修医のために、糖尿病専門医の取得までの年数と、取得後の更新・維持の条件について、日本専門医機構の一次資料を読み解き、整理しています。
以下の数値は、断りのない限り、日本専門医機構がまとめた「日本専門医制度概報 令和7年度版」によります。この資料が載せている糖尿病の研修期間は、認定教育施設で3年以上です。認定教育施設とは、日本糖尿病学会が研修先として認めた診療科で、認定されるのは病院そのものではありません。ただしこの3年は、内科なら認定内科医の研修課程を修了した後、小児科なら小児科専門医の研修課程を3年以上修了した後から数えます。認定内科医とは、日本専門医機構が認定する内科専門医より前から日本内科学会が認定してきた資格で、その研修課程が何年かかるかはこの資料に載っていません。そのため、内科から入る場合に卒業から何年目で申請できるかは、資料だけでは確定できません。
糖尿病を専門にする資格には、名前の似たものが2つあります。日本内分泌学会が認定する内分泌代謝科専門医と、日本糖尿病学会が認定する糖尿病専門医で、資料もこの2つを別々のページで扱っています。どちらも、内科などの基本領域の専門医の上に積む二段階目のサブスペシャルティ資格です。本記事が扱うのは糖尿病専門医です。
糖尿病専門医で押さえておくべき点は、次の3つです。
- 年数:認定教育施設で3年以上の糖尿病臨床研修が必要です。認定教育施設と、常勤の糖尿病専門医がいてそこと連携する教育関連施設の研修を合わせるなら、それぞれ2年ずつの計4年になり1年長くなります。ただしこの3年は認定内科医の研修課程を修了した後から数えるので、卒業から何年目に申請できるかは確定できません
- 試験に論述がある:筆記は選択問題35問と論述問題4問で、2024年度の試験では口頭試験も行われました。資料に個別のページがある29のサブスペシャルティ領域で、筆記に論述問題があるのは糖尿病専門医だけです
- 更新に70単位と20症例が要る:5年ごとに70単位と、糖尿病患者20症例以上の治療経験、20症例の症例報告が必要です。単位とは、更新要件として学会が活動ごとに割り当てたポイントです。小児では治療経験が5症例以上、症例報告が5症例になり、70単位は変わりません
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取得までに何年かかるかと、申請資格の7項目
資料が挙げる申請資格は7項目で、そのうち研修の年数を定めているのは1項目だけです。原文は、認定内科医研修の課程を修了後、または小児科専門医研修の課程を3年以上修了後、認定された認定教育施設において3年以上の期間にわたって常勤者として糖尿病臨床研修を行っていること、となっています。条文は小児科の側にだけ3年以上と年数を置き、内科の側には置いていません。
小児科から入る場合を書かれた順に足すと、初期研修の2年、小児科専門医の研修課程の3年、糖尿病の研修の3年で卒業後8年になります。ただし「3年以上修了後」が課程の全体を終えることを指すのか3年を終えた時点を指すのかは読み取れず、小児科の研修と糖尿病の研修を重ねられるかも書かれていないので、この8年は条文を順に読んだ場合の年数です。
内科から入る場合には、ただし書きがあります。移行期には、内科とサブスペシャルティの混合タイプのプログラムを選んだ専攻医は内科の専門研修の開始時から、サブスペシャルティ重点研修タイプのプログラムを選んだ専攻医は内科の専門研修の開始時または2年目以降の希望する時期から、糖尿病専門医の研修を始められます。プログラムとは、内科の専門研修を始めるときに選ぶ研修の型です。早く始められるのはこの2つの型を選んだ人だけで、内科から入る人すべてではありません。移行期がいつまで続くのかは資料に書かれていません。
研修先の組み合わせでも年数が変わります。1つの認定教育施設で積むなら3年以上、認定教育施設と教育関連施設の研修を合わせて申請する場合はそれぞれ2年ずつの計4年間で、1施設で積む3年より1年長くなります。教育関連施設とは、常勤の糖尿病専門医がいて認定教育施設と連携している施設です。
7項目の内訳は、ここまで見た研修年数が1項目、満たすべき条件が5項目、免除の規定が1項目です。満たすべき条件は次の5つです。
- 日本国の医師免許証を持ち、医師としての人格および識見を備えていること
- 申請時に、連続3年以上の日本糖尿病学会の会員であること
- 申請時に、日本内科学会の認定内科医または日本小児科学会の専門医として認定されていること
- 糖尿病臨床に関する筆頭者としての学会発表または論文が2編以上あること
- 研修カリキュラムに定められた症例の経験を持つこと。カリキュラムとは、学会が定めた研修項目のまとまりです
残る1項目が免除の規定で、糖尿病診療に関する海外の専門医資格を持つ人は、審査のうえ申請の要件が一部免除されることがあります。どこまで免除されるかは書かれていません。
3つめには注意が要ります。資料の内科のページには、総合内科専門医と認定内科医、日本専門医機構が認定する内科専門医の3つが並んでいますが、糖尿病専門医の申請資格に出てくるのは認定内科医だけです。総合内科専門医を持つ人が申請できるのかも、認定内科医をこれからも取得できるのかも書かれていません。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
研修カリキュラムの4区分と、論述のある試験
資料は研修カリキュラムの構成を4つの区分で示しています。
- Ⅰ 知識・理解
- Ⅱ 診察・検査
- Ⅲ 治療・管理
- Ⅳ 症例(数)
各区分には研修事項が並び、それぞれに到達目標が段階で示されます。Ⅰの知識・理解はAとBの2段階、Ⅱの診察・検査とⅢの治療・管理はどちらもA、B、Cの3段階で、各項目には自己評価と指導医の評価の欄が付いています。カリキュラムには「医療安全、医療倫理、医事法制」の項目もあります。ただし、AやBやCがそれぞれ何を求める水準なのか、Ⅳの症例(数)で何をどれだけ経験するのかは資料に載っていません。申請資格の5つめにある「研修カリキュラムに定められた症例の経験」が何症例なのかも、ここからは分かりません。
試験について資料が載せているのは次の2つです。
- 筆記試験:選択問題35問と論述問題4問。合わせて39問です
- 口頭試験:2024年度の試験で実施
筆者が29領域の試験の欄を見比べたところ、筆記に論述問題を挙げているのは糖尿病専門医だけでした。口頭試験の記載は2024年度のもので、それ以降の年度も行われるかは分かりません。合格の基準や配点、実施時期と回数、受験料も資料には載っていません。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
認定試験の合格率は3年とも8割に届かない
認定試験の結果は直近3年度分が資料に載っています。
- 令和4年度(2022年度):受験者394人、合格者261人、合格率66.2%
- 令和5年度(2023年度):受験者312人、合格者239人、合格率76.6%
- 令和6年度(2024年度):受験者312人、合格者243人、合格率77.9%
どの年も80%に届いていません。3年を合わせると受験者1,018人、合格者743人、不合格275人で、3年を通した合格率は73.0%です。令和4年度だけ受験者がほかの2年度より82人多く、合格率も66.2%と低くなっていますが、その理由は資料からは読み取れません。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
糖尿病専門医の更新・維持の条件(5年ごと・70単位と20症例)
糖尿病専門医は5年ごとの更新制で、更新審査料は30,000円です。更新の条件は次の5つです。
- 専門医として認定されたあとも、連続して日本糖尿病学会の会員であること
- 原則として更新時に、日本内科学会の認定内科医または日本小児科学会の専門医として認定されていること
- 過去5年間に取得した単位を集計して70単位に達していること
- 過去5年間に、入院または外来の糖尿病患者20症例以上の治療経験を持つこと。小児では5症例以上
- 症例報告20症例を提出すること。小児では5症例
治療経験と症例報告はどちらも20症例ですが、同じ患者でよいのか、別々に20症例ずつ必要なのかは資料から読み取れません。「小児では」が、小児科から入った専門医を指すのか小児の患者を診る場合を指すのかも読み取れません。70単位の内訳は、学会の別表に定められているとあるだけです。
初回の認定から3回の更新を完了している場合、4回目の更新からは症例報告の提出が免除されます。5年ちょうどの間隔なら3回終えるのは初回認定から15年後なので、症例報告を出さずに済むのは20年目の更新からです。免除は症例報告だけで、70単位と20症例の治療経験は残ります。
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
専門医は7,110人、研修施設は919
糖尿病専門医は2025年10月現在で7,110人です。資料の一覧表は専門医数を、学会が認定した学会認定専門医と日本専門医機構が認定した機構認定専門医の2列で数えていて、7,110人は学会認定専門医数の欄です。機構認定専門医数の欄は「――」で、これが0人なのか集計していないだけなのかは分かりません。これから受験する人がどちらの認定になるのかも書かれていません。
会員数は資料の2か所で食い違っています。糖尿病のページは2025年10月現在の会員数を医師15,897人、医師以外1,538人、計17,435人としていますが、学会ごとの一覧表は17,214人で、221人の差があります。一覧表には基準日がないため、この差が時点の違いによるものかは分かりません。
研修施設は2025年10月現在で、認定教育施設832、教育関連施設60、連携教育施設(小児科)27の計919です。連携教育施設は小児科に置かれる区分です。ただし申請資格の条文に出てくるのは認定教育施設と教育関連施設だけなので、連携教育施設の期間を研修年数に数えられるかは読み取れません。
施設の要件には指導する側の条件が関わるので、先に研修指導医から説明します。研修指導医とは、日本糖尿病学会が認定する、専攻医を指導する立場の医師です。なるためには、日本国の医師免許証と医師としての人格および識見、申請時に連続8年以上の日本糖尿病学会の会員であること、糖尿病専門医であること、規則と細則で定める業績を持つこと、糖尿病患者の診療と教育に十分な経験があることの5つが必要です。認定期間は5年です。日本糖尿病学会の専門医認定委員会が特に認めて推薦した人は特例研修指導医と呼ばれ、認定期間は2年です。
認定教育施設と教育関連施設に共通する要件は5つで、研修カリキュラムに基づく糖尿病学の研修が可能であること、糖尿病の専門外来があること、食事指導が常時行われていること、糖尿病患者教育が行われていること、診療記録管理室があることです。加えて、認定教育施設には常勤の研修指導医または特例研修指導医が、教育関連施設には常勤の糖尿病専門医と、認定教育施設と連携して研修指導医の定期的な指導を受けられる体制が必要です。
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出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
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まとめ|糖尿病専門医を目指すなら先に決めること
- 年数:糖尿病の研修は認定教育施設で3年以上、認定教育施設と教育関連施設に分けるならそれぞれ2年ずつの計4年です。前提となる認定内科医の研修課程の長さが資料にないため、内科から入る場合に卒業から何年目で申請できるかは確定できません。小児科からは条文を順に足すと卒業後8年です
- 入口の資格:申請時に日本内科学会の認定内科医または日本小児科学会の専門医が必要です。名前の似た総合内科専門医と内科専門医は条文に出てきません
- 学会活動:申請時に日本糖尿病学会の会員歴が連続3年以上あり、筆頭者としての学会発表または論文が2編以上必要です
- 試験と合格率:筆記は選択問題35問と論述問題4問で、2024年度は口頭試験も行われました。直近3年度の合格率は66.2%、76.6%、77.9%で、3年を通すと73.0%です
- 維持:5年ごとの更新で、70単位、糖尿病患者20症例以上の治療経験、20症例の症例報告が必要です。小児では治療経験が5症例以上、症例報告が5症例で、70単位は変わりません。5年ごとに更新を続けた場合、初回認定から3回の更新を終えた20年目から症例報告が免除されます
- 領域の規模:専門医は2025年10月現在で7,110人、研修施設は認定教育施設832、教育関連施設60、連携教育施設(小児科)27の総数919です
出典:日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」
参考文献
- 日本専門医機構「日本専門医制度概報 令和7年度版」. https://jmsb.or.jp/wp-content/uploads/2026/03/gaiho_2025.pdf
- 日本糖尿病学会. http://www.jds.or.jp/

太田 旭
株式会社eggside 代表取締役。医学生。
自由診療のための医師向けメディア「doctorside」を運営したり、クリニック集患支援を行っている。