【医師向け・2026年版】オンライン診療で処方はどこまで可能か?初診で出せない薬と、2026年4月の省令化を解説

本記事では、医学部に在籍する筆者が、オンライン診療で薬を出そうとしている医師のために、初診で処方できない薬の範囲と、2026年4月に変わった規制の枠組みについて、厚生労働省の指針・施行通知・Q&A・美容医療の通知という4つの一次資料を読み解き、整理しています。厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を本記事では指針と表記します。この指針は平成30年3月に定められ、令和5年3月の一部改訂を経て令和8年4月に改訂されています。

オンライン診療の処方で押さえておくべき点は、次の3つです。

  • 初診で行わないこととされた処方が3つある:麻薬および向精神薬の処方、特に安全管理が必要な薬品の処方、8日分以上の処方。後ろの2つは、基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する場合を指します。初診をオンラインで行い2度目以降もオンラインで行った患者に処方する場合も、初診の場合に処方を行わないものとして列挙された医薬品は初診と同等に取り扱うのが妥当だとQ&Aは書いています
  • 指針の「最低限遵守する事項」が省令の基準になった:令和8年(2026年)4月1日施行の改正で、オンライン診療基準という省令上の基準が置かれ、オンライン診療はこの基準に従って行われなければならないものとされました。厚生労働省が都道府県知事などに宛てて法令の解釈や運用を示した施行通知には、都道府県知事等が、自由診療の場合も含めて報告徴収・立入検査と是正命令等を行うことができると書かれています
  • 転売や不適正使用が疑われる場面が名指しされている:指針は、患者が向精神薬、睡眠薬、医学的な必要性に基づかない体重減少目的に使用されうる利尿薬や糖尿病治療薬、美容目的に使用されうる保湿クリーム等の処方を希望するなど、転売や不適正使用が疑われるような場合に処方することはあってはならないとしています

本記事では、2026年4月の改正で何が変わったか、初診で処方できない薬と指針が挙げる不適切な例、メールとチャットだけの診療の扱いという3つを順に整理します。最後に、一次資料で確かめてほしい点をまとめます。

→ 関連記事:【2026年4月施行】医療法改正で何が変わったのか|開業を考える医師が押さえるべき6つの変更点

執筆者プロフィール

太田 旭

株式会社eggside 代表取締役。医学生。自由診療のための医師向けメディア「doctorside」を運営しつつ、LP制作、Google広告運用、SNS運用代行など、クリニック・歯科医院を中心としたマーケティング支援に従事しています。

2026年4月の改正で、指針の一部が省令の基準になった

医療法等の一部を改正する法律(令和7年法律第87号)が令和7年12月12日に公布され、そのうち医療法のオンライン診療に関する部分が令和8年4月1日に施行されました。西暦では2025年12月12日の公布、2026年4月1日の施行です。あわせて政令、省令、告示が令和8年3月27日に公布され、いずれも令和8年4月1日付けで施行または適用されています。政令は内閣が定める命令、省令は厚生労働大臣が定める命令、告示は決めた内容を官報で公示する形式です。医療法の省令には医療法施行規則があります。

施行通知は、改正の内容として次の2つを挙げています。

  • 医療法上の医療提供施設のひとつとして、患者がオンライン診療を受ける施設である「オンライン診療受診施設」を位置づけ、診療所と比較して簡素な要件・手続等のもとでの整備を可能にすること
  • オンライン診療指針の内容を省令に引き上げることで、違反に対しては都道府県知事等(保健所設置市長・区長を含む)の是正命令等を可能にすること

処方の実務に関わるのは後者です。改正法により、厚生労働大臣は省令でオンライン診療の適切な実施に関する基準(以下、オンライン診療基準)を定めなければならないものとされ、オンライン診療はこの基準に従って行われなければならないものとされました。改正後の医療法第14条の3です。

指針がまるごと省令になったわけではありません。指針は項目ごとに「考え方」と「最低限遵守する事項」を置き、項目によっては「推奨される事項」や「不適切な例」も付記していて、薬剤処方・管理の項目にはこの4つがそろっています。施行通知は、オンライン診療基準をこのうち「最低限遵守する事項」を基本として規定するものとするとしていて、第2節で見る初診の3つの制限も、第3節で見る診察方法の2点も、指針ではこの「最低限遵守する事項」に置かれています。施行通知が挙げている条番号は改正後の医療法施行規則の第9条の6の3から第9条の6の19までですが、薬剤処方と診察方法がどの条文になったかは示していません。

都道府県知事等は、オンライン診療について、自由診療の場合も含め、病院または診療所に加えオンライン診療受診施設についても、報告徴収・立入検査と是正命令等を行うことができるとされています。根拠として挙げられているのは、改正後の医療法第24条の2と第25条第1項・第2項等です。是正命令に従わなかった場合に何が起きるかは、病院または診療所については施行通知に書かれていませんが、Q&Aは、命令に従わない場合には医療法に基づき業務の全部または一部の停止命令や、さらに開設許可の取消処分や閉鎖命令を行うことが可能だと答えています。オンライン診療受診施設については、清潔保持を命令し、従わないときは業務の全部または一部の停止を命令し、さらにその命令に違反したときは期間を定めて閉鎖を命じること等が、施行通知に例として挙げられています。

この改正では、オンライン診療を行う旨が医療機関の届出事項に加わり、すでにオンライン診療を行っている医療機関には令和9年(2027年)3月31日までの経過措置が置かれました。改正省令附則第3条です。あわせて、オンライン診療を行う医師が勤務する病院または診療所の管理者は、オンライン診療基準に適合したオンライン診療が行われるよう必要な措置を講じることとされています。改正後の医療法第14条の4です。届出と管理者の義務の中身は、関連記事の解説にゆずります。

出典:厚生労働省「医療法等の一部を改正する法律の一部の施行等について(オンライン診療関係)」令和8年3月27日 医政発0327第5号、厚生労働省「「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に関するQ&A」 Q17

初診では行わないこととされた3つの処方と、不適切な例

これから見る3つの制限は、指針の「薬剤処方・管理」という項目の「最低限遵守する事項」に置かれています。この3つが省令のどの条文になったのかは書かれていないため、個別の違反がどの基準への違反として扱われるかは特定できません。

指針はまず、現にオンライン診療を行っている疾患の延長とされる症状に対応するために必要な医薬品については、医師の判断によりオンライン診療による処方を可能としています。「疾患の延長とされる症状」がどこまでを指すかは、指針にもQ&Aにも書かれていません。そのうえで、初診からのオンライン診療の場合と新たな疾患に対して処方を行う場合は、一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」等の関係学会が定める診療ガイドラインを参考に行うこと、としています。求められているのは参考にすることであって、このリストに載った薬剤の処方が禁止されるとは書かれていません。

そのうえで、初診の場合には次の処方を行わないこととされています。

  • 麻薬および向精神薬の処方
  • 基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する、特に安全管理が必要な薬品の処方。指針はこれを、診療報酬における薬剤管理指導料の「1」の対象となる薬剤だと括弧書きで示しています。薬剤管理指導料は診療報酬上の区分の名称で、その「1」に当たる薬剤の範囲は、本記事が読んだ4つの資料のいずれにも書かれていません
  • 基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する8日分以上の処方

3つのうち麻薬および向精神薬だけは、患者の情報が把握できているかどうかを問わず、初診では処方を行わないこととされています。「基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する」という条件が付いているのは後ろの2つです。Q&Aはその理由として、麻薬及び向精神薬取締法による厳格な規制と、初診からのオンライン診療では薬剤の濫用・転売のリスクを十分に抑制することが困難と考えられることを挙げています。

8日分の制限についてはQ&Aが、処方医による一定の診察頻度を確保して患者の観察を十分に行う必要があるという観点から処方日数は7日間を上限としている、と書いています。基礎疾患等の情報が把握できている患者について日数の扱いがどうなるかは、指針にもQ&Aにも書かれていません。

基礎疾患等の情報をどう把握するかもQ&Aに書かれていて、既往歴、服薬歴、アレルギー歴等や処方に必要な医学的情報を、過去の診療録、診療情報提供書、お薬手帳、PHR等により確認し把握する必要がある、というものです。PHRは指針がPersonal Health Recordの略として使っている語です。

初診が終われば制限が外れる、とは読めない書き方になっています。Q&Aは、初診をオンライン診療により実施し、2度目以降の診療もオンライン診療で実施した患者に対して処方を行う場合、初診の場合に処方を行わないものとして列挙している医薬品については初診と同等に取り扱うことが妥当だとしています。あわせて、この「過去の診療録」には、初診と2度目以降の診療をすべてオンライン診療で実施した場合の診療録は含まれないとも書かれています。除かれているのは診療録で、お薬手帳やPHRなど他の手段の扱いにQ&Aは触れていません。

指針は同じ「薬剤処方・管理」の項目のなかに、「最低限遵守する事項」とは別の枠として「不適切な例」も置いています。そのひとつが、医薬品の転売や不適正使用が疑われるような場合の処方です。指針の書き方は、患者が向精神薬、睡眠薬、医学的な必要性に基づかない体重減少目的に使用されうる利尿薬や糖尿病治療薬、美容目的に使用されうる保湿クリーム等の特定の医薬品の処方を希望するなど、医薬品の転売や不適正使用が疑われるような場合に処方することはあってはならず、このような場合に対面診療でその必要性等の確認を行わず、オンライン診療のみで患者の状態を十分に評価せず処方を行う例、というものです。

薬剤名が並んでいますが、これらの薬をオンラインで処方すること自体が不適切だと書かれているのではありません。挙げられているのは、こうした薬の処方希望が転売や不適正使用を疑う手がかりのひとつになる、という例示です。希望されたことだけで疑いが立つのか、ほかの事情も要るのかは書かれていません。これは「不適切な例」であって「最低限遵守する事項」ではないため、そのまま省令の基準になったとは施行通知に書かれていません。

出典:厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」令和8年4月改訂 Ⅴ1(5)・Ⅴ1(5)④、厚生労働省「「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に関するQ&A」 Q19・Q20・Q21・Q23

メールとチャットだけの診療は医師法第20条違反のおそれ

次は、その処方をどの手段で出したかを見ます。医師法第20条は、医師は自ら診察しないで治療をし、もしくは診断書もしくは処方せんを交付するなどしてはならないと定めた条文で、無診察での治療等の禁止と呼ばれています。

指針は診察方法についても「最低限遵守する事項」を4つ置いていて、このうち手段にかかわる項目が次の2点を求めています。

  • オンライン診療では、可能な限り多くの診療情報を得るために、リアルタイムの視覚および聴覚の情報を含む情報通信手段を採用すること
  • オンライン診療は、文字、写真および録画動画のみのやりとりで完結してはならないこと

指針は、対面診療に代替し得る程度の情報が得られる場合に、補助的な手段として画像や文字等のやりとりを活用することは妨げないとしています。Q&Aは、チャットなどのみによる診療は認められません、と端的に答えています。

厚生労働省は令和7年8月15日に、これを美容医療にあてはめた「美容医療に関する取扱いについて」(医政発0815第21号)を出し、オンライン診療指針を遵守せずメール・チャットのみにより診療を行う事例等が報告されていると指摘しています。この通知は、メールやチャットのみによる診察ではリアルタイム性の低い文字情報の問診しかなし得ず、得られる情報が極めて限定されると述べたうえで、対面診療と同程度の診察が行われているといえないにもかかわらず診断・処方等を行うなど、メールやチャットのみによる診療を行うことは、オンライン診療指針に違反しており、医師法第20条違反となるおそれのある行為である、と整理しています。ここでいう診察は、問診、視診、触診、聴診その他手段の如何を問わないが、現代医学から見て疾病に対して一応の診断を下し得る程度のものをいう、とも書かれています。

この通知が引くオンライン診療指針は平成30年3月(令和5年3月一部改訂)のもので、指針はその後、令和8年4月に改訂されています。通知が違反の根拠としているオンライン診療指針そのものについて、Q&Aは、保険診療に限らず自由診療におけるオンライン診療についても適用されると答えています。

「おそれのある行為」という書き方にも注意してください。この通知は法令の解釈を示した行政の文書で、個別の行為が犯罪にあたるかどうかを決めるものではありません。通知の冒頭には、犯罪の成否は捜査機関が収集した証拠に基づいて裁判所が最終的に判断するものである、と添えられています。

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出典:厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」令和8年4月改訂 Ⅴ1(6)②、厚生労働省「「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に関するQ&A」 Q1・Q24、厚生労働省「美容医療に関する取扱いについて」令和7年8月15日 医政発0815第21号 第1の3

一次資料で確認しておくこと

オンライン診療基準そのものの条文、つまり改正後の医療法施行規則第9条の6の3から第9条の6の19までの本文は、施行通知の本文には収められていません。施行通知には官報を別添として付ける旨が書かれているので、指針の「最低限遵守する事項」のどこがどう条文になったかは、別添の省令本文か医療法施行規則そのもので確かめてください。

薬剤管理指導料の「1」の対象となる薬剤の範囲は、本記事が読んだ4つの資料のいずれにも書かれていません。指針は診療報酬の区分を参照する形になっているため、自院で扱う薬剤が該当するかは診療報酬側の資料で確かめてください。

届出の経過措置は、令和9年3月31日までの間は変更の届出を要しない事項とする、という書き方です。その日以降に自院がいつ何を出すことになるかは、所管の都道府県の案内で確認してください。

参考文献

  • 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」平成30年3月(令和8年4月改訂). https://www.mhlw.go.jp/content/001685701.pdf
  • 厚生労働省「医療法等の一部を改正する法律の一部の施行等について(オンライン診療関係)」令和8年3月27日 医政発0327第5号. https://www.mhlw.go.jp/content/001681277.pdf
  • 厚生労働省「「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に関するQ&A」. https://www.mhlw.go.jp/content/001686805.pdf
  • 厚生労働省「美容医療に関する取扱いについて」令和7年8月15日 医政発0815第21号. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9325&dataType=1&pageNo=1
この記事の監修者

太田 旭

株式会社eggside 代表取締役。医学生。
自由診療のための医師向けメディア「doctorside」を運営したり、クリニック集患支援を行っている。