【2026年版】病理専門医の取得に何年かかる?更新・維持の条件も解説

本記事では、医学部に在籍する筆者が、これから病理専門医の取得を目指す研修医と専攻医のために、病理専門医の取得までの年数と、取得後の更新・維持の条件について、日本病理学会の一次資料を読み解き、整理しています。

病理専門医は、初期臨床研修を修了したあと、病理の専門研修を3年以上受けて取得します。初期研修修了後で数えて最短3年、医師免許の取得からは最短5年です。

病理専門医で押さえておくべき点は、次の3つです。

  • 取得までの年数:初期研修修了後に専門研修を3年以上で、最短3年。研修中に剖検24体・組織診5000件・細胞診1000件・術中迅速診断50件を積む
  • 更新の条件:5年ごとに合計50単位。初回更新では、剖検10例のリストと剖検診断書10例分の提出が別に求められる
  • 病理医の仕事の中心:剖検や死体解剖資格が要件に並ぶが、日常業務の中心は組織診断と細胞診で、剖検は件数でいえば仕事の一部

本記事では、病理専門医の取得までの流れ、研修で積む症例と死体解剖資格、受験と認定試験、更新・維持の条件、病理医の仕事の中身と剖検要件が変わった経緯を順に整理します。

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執筆者プロフィール

太田 旭

株式会社eggside 代表取締役。医学生。自由診療のための医師向けメディア「doctorside」を運営しつつ、LP制作、Google広告運用、SNS運用代行など、クリニック・歯科医院を中心としたマーケティング支援に従事しています。

病理専門医の取得までの流れ(最短3年)

病理専門医になるまでの流れは、初期臨床研修を2年終えたあと、病理の専門研修プログラムに3年以上入り、研修を修了して認定試験に合格する、という順です。初期研修の2年はどの科にも共通で必要で、病理ならではの研修はそのあとの3年です。取得までの年数を初期研修修了後で数えると、最短3年になります。

  • 1〜3年目:病理診断科で診断標本に向き合いながら、剖検や術中迅速診断を経験する
  • 研修と並行して:担当した症例を実績として登録し、指導医の評価を受ける
  • 修了後:病理専門医試験を受ける

病理には、医師免許とは別に死体解剖資格が要るという、他科にない条件があります。死体解剖資格は保健所を通じた申請で得るもので、一定数の剖検経験が前提になります。研修で積む剖検は、この資格を取るための実地経験も兼ねています。

出典:日本病理学会「2026(令和8)年度 病理専門医試験申請要綱」

研修で積む症例と死体解剖資格

研修で積む主な症例数
病理研修3年で積む主な症例数。中心は組織診5000件

病理の専門研修で積む症例数には、この科の性格がよく表れています。日本病理学会が定める修了要件は、次のとおりです。

  • 剖検:24体。病気で亡くなった患者を、診断の確認や死因の究明のために解剖する病理解剖のこと
  • 術中迅速診断:50件。手術中に採取した組織をその場で短時間に診断し、手術方針の判断材料にする診断
  • 組織診:5000件。生検や手術で取れた組織を顕微鏡で見て診断する
  • 細胞診:1000件。採取した細胞を調べて良性か悪性かなどを判断する
  • 学術業績:3編

組織診の5000件は、剖検24体と比べて桁が違います。研修3年でほぼ毎日診断標本に向き合う前提の設計と読み取れます。剖検24体は、死体解剖資格を取るための実地経験も兼ねる要件です。病理専門医が死因究明や医療事故調査で果たす役割は、この剖検の経験の上に成り立っています。

出典:日本病理学会「2026(令和8)年度 病理専門医試験申請要綱」

受験資格と認定試験

病理専門医試験は、専門研修プログラムを修了する見込みで、剖検や組織診などの症例要件と学術業績を満たした人が受けられます。受験には、死体解剖資格のうち「病理」の資格が必要です。試験の出題数など細かい形式は、受験する年度の申請要綱で確認してください。

なお、剖検24体などの症例数は、適用される版が改定で変わります。これから研修に入る人は、自分に対応する版を学会サイトで確かめてください。

病理専門医の更新・維持の条件(5年ごと・50単位)

更新は5年ごと50単位
5年で50単位。初回更新は剖検10例のリストと診断書も提出

病理専門医は、取得して終わりではなく、5年ごとに更新します。更新の条件は、その5年間で合計50単位以上を取ることです。

単位とは、更新のためにためるポイントのことです。講習の受講や経験した症例数、学会発表など、日々の医師の活動に応じてたまります。この50単位は、次の4つの区分をまたいで集めます。

  • 診療実績:5〜10単位
  • 共通講習:3〜10単位。医療安全や感染対策、医療倫理など、どの科の専門医にも共通で求められる講習
  • 領域講習:20単位以上。病理の学術集会や研修会など、専門分野の講習で、更新単位の中心になる
  • 学術業績:0〜10単位。学会発表や論文など

病理で押さえておきたいのが、初回更新に別の条件がある点です。専門医を取ってから最初の5年間では、剖検10例のリストと、その10例分の剖検診断書の提出が求められます。いずれも専門医を取得したあとに経験した症例に限ります。専門医になったあとも剖検の実務から離れないための設計で、死因究明の担い手を保つ意図がうかがえます。単位の内訳は2024年6月24日改定の版に沿います。以降に改定があれば最新版が優先されます。

出典:日本病理学会「専門医更新の単位について」(2024年6月24日改定)

病理医の主な仕事は解剖ではなく診断

剖検と死体解剖資格が要件の先に来るので、病理医は解剖を専門にする医師だと思われがちです。実際の日常業務の中心は、次の2つです。

  • 組織診断:生検や手術で取れた組織を顕微鏡で診断する
  • 細胞診:採取した細胞を調べて良性か悪性かなどを判断する

研修で積む数を見ても、剖検24体に対して組織診は5000件で、桁が違います。剖検(病理解剖)は欠かせない要件ですが、件数でいえば仕事の一部です。

解剖にも種類があり、担い手が分かれます。

  • 病理解剖(剖検):病気で亡くなった患者を、診断の確認や死因の究明のために解剖する。担うのは病理医
  • 法医解剖:事件性があったり死因が不明だったりする遺体を解剖する。担うのは法医

死体解剖資格そのものも「病理」と「法医」に分かれていて、病理専門医には「病理」の資格が要ります。法医の資格だけでは受験できません。病理医は、いわゆる法医とは別ですが、自分で病理解剖を行うため、剖検が専門医の必須要件になっています。

剖検の必要数が30体から24体に下がった経緯

剖検要件30→24体
剖検要件が30体から24体へ。施設間の機会差をならす狙い

剖検24体は、以前の30体から引き下げられた数字です。経緯は次のとおりです。

  • 2022年6月27日:日本病理学会が剖検症例数の要件を見直し、24体への変更を告知
  • 2023年度以降:病理専門医試験の申請から24体を適用
  • 経過措置:2022年度以前に不合格だった人が2023年度に受験申請する場合も、新しい24体が適用される

背景には、剖検数そのものが全国的に減っている実情があります。剖検は遺族の承諾を前提とするため、施設によっては研修中に30体を積むのが難しくなっていました。要件を24体にそろえることで、研修の機会が施設間でばらつく問題をならす狙いとみられます。年数そのものは短くなりませんが、達成のハードルは下がりました。実際に取得にかかる年数は、剖検の承諾が得られる頻度など施設の事情で、最短の3年より延びる場合があります。

出典:日本病理学会「専門医制度における剖検症例数の変更について」(2022年6月27日)

参考文献

  • 日本病理学会「2026(令和8)年度 病理専門医試験申請要綱」. https://www.pathology.or.jp/senmoni/2026shiken.pdf
  • 日本病理学会「専門医制度における剖検症例数の変更について」(2022年6月27日). https://www.pathology.or.jp/senmoni/20220627.html
  • 日本病理学会「専門医更新の単位について」(2024年6月24日改定). https://www.pathology.or.jp/senmoni/koushin_tani20240624.pdf
この記事の監修者

太田 旭

株式会社eggside 代表取締役。医学生。
自由診療のための医師向けメディア「doctorside」を運営したり、クリニック集患支援を行っている。